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■任意保険は事故相手への賠償の備え。自分に合った保証内容を選びたい
カーライフを送る中で、おろそかにされがちなのが自動車保険です。なかでも任意保険は補償内容が多岐にわたり、複雑でわかりにくく、きちんと理解するのが難しいので、保険屋さんに言われるがまま加入されている方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、任意保険の補償内容について解説しながら、自分に合った補償内容の選び方をお教えします。
自動車保険の補償には大きく3つの役割があります。「相手と相手のモノ」に関する補償、「自分と自分の家族」に関する補償、そして「自分のクルマ」に関する補償です。まずは「相手と相手のモノ」に関する補償から解説していきます。
●「対物賠償」は無制限に。「対物超過修理費用特約」も必須
自分の不注意やミスによって、他人の物を破壊してしまったり、相手を傷つけたりした時の補償がこれにあたります。任意保険のなかで最も大切な補償となるので、しっかりと確認しましょう。保険の項目は「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」です。どちらも「無制限」かつ「免責金額0円」での加入を強く推奨します。
対人賠償についてはほとんどの方が「無制限」にされていると思いますが、対物賠償については理解が薄く、上限額を設定している方を多く見かけます。相手のモノに対する補償なので、多めに見積もっても家などの不動産が最高額と思っているからかもしれません。しかし、これは誤りです。
ここで、あえて「モノ」とカタカナ表記にしたのには理由があります。対物賠償の中には、目に見えて形のある物のほかに、サービスのような形のないモノも含まれるのです。過去の判例では、パチンコ店にクルマが突っ込み、営業できなかった日数分の遺失利益が賠償額に含まれ、1億3000万円の支払いを命じられたケースもあります。
また、事故当時の時価が、修理金額を超えてしまうケースに使える「対物超過修理費特約」も必ずつけるようにしましょう。
対物賠償の保険金計算は、相手のモノの価値に対する損害賠償となり、価値がゼロと判断されたモノに対しての修理費用は支払われません。旧車との事故などによくあるケースですが、相手のクルマの査定金額はゼロ、しかし相手はクルマを修理して乗り続ける意思があり、修理費用は100万円となってしまったとすると、対物賠償責任保険は機能しなくなってしまいます。この時の修理費用を、特約として補償するのが「対物超過修理費用特約」です。
●「人身傷害保険」は他の保険も考慮する
続いて「相手と相手のモノ」に関する補償について。それが、自らが怪我をしたり、同乗者していた家族が怪我をした際に使える「人身傷害保険」です。
怪我の際の治療費に当てられることが多く、最大額が出るケースは、クルマでの事故により命を落としてしまった場合がほとんどです。概ね3000万円から5000万円程度が担保されていれば十分でしょう。他に傷害保険や生命保険などの加入がある場合には、補償範囲を「クルマに搭乗中のみ」とすることで、保険料を割安にすることができます。
●「車両保険」は指定金額の満額を設定したい
最後に「自分のクルマ」に関する補償について。保険の項目は「車両保険」になりますが、これは保険料と相談して加入するか否かを決定して大丈夫です。絶対に入っておかなければならないものではありません。
ここでの注意点は、加入する場合に車両保険金額をいたずらに下げないことです。
現在のクルマの価値を担保するための金額を保険会社は設定していますが、この金額を下げていくことで保険料が安くなります。しかし、万が一の事故の際には、加入時に指定された金額の何割に加入したかによって、支払われる保険金も按分されてしまいます。100万円設定のクルマで、50万円分しか加入しなかった場合、修理費が50万円かかっても、当初加入割合が50パーセントなので、修理費の半分しか補償されず、25万円分しか支払われません。これでは車両保険に入る意味合いが薄れてしまうので、加入の際には指定金額の満額を設定しましょう。
また、修理期間中に代車が借りられてなくて困るケースが散見されます。代車難民にならないように、レンタカー費用補償には加入しておくといいでしょう。
クルマ無しでの生活が1か月程度可能であれば非加入でも構いませんが、日常的にクルマを使用する方にとっては、必須の補償と言えるでしょう。修理工場や自動車ディーラーでも長期的に貸し出せる代車には限りがあります。愛車を使えない期間に備えることも、自動車保険では必要なことです。
●まとめ「カテゴリーごとに検討すると補償内容を理解しやすくなる」
補償項目が多く、わかりにくい自動車保険の世界ですが、相手・自分・自分のクルマと3つのカテゴリーに分けることで、入るべき補償も見やすくなります。今回取り上げた項目にしっかりと加入していれば、自動車保険としての最低限の役割は果たすことができますよ。要件をしっかりと満たしているか、ご自身の自動車保険も一度確認してみてください。
(文・写真:佐々木 亘)