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■車検は何をするためのもの? 改めて一度おさらいしてみよう
クルマを長く所有していると、必ず付いてまわるのが「車検」です。しかし、車検がなぜ必要なのかよく分からないまま「決まりごとだから受けている」というユーザーも多いと思います。
今回は、車検とは何なのか、どういった仕組みなのかを解説していきます。
●車検=「継続検査」。保安基準に適合していれば合格
クルマを公道で走らせるには、自動車検査登録制度という仕組みによって決められた検査に合格し、国に登録申請をする必要があります。検査に合格したことを証明し、無事登録が済んだことを示すものが車検証です。
メーカーの工場から出荷されたクルマや、中古車でも車検証が無いクルマは「新規検査」を受けて車検証とナンバープレートを発行してもらいます。自動車業界では通称「登録」と呼ばれることが多く、車検整備を伴うものですが、一般的に呼ばれる車検とは区別されています。
「車検の時期が来ちゃって」「そろそろ車検だな」という会話の中に出てくる車検は、「継続検査」のことです。車検証に定められた有効期限内に車検を受けることで、有効期限を延長させます。
継続検査に合格するためには、道路運送車両法に定められた保安基準に適合しなければなりません。裏を返せば、保安基準にさえ適合してしまえば車検を通すことは可能なので、整備をすることが絶対条件ではありません。
●車検の合否とクルマの調子の良し悪しは無関係
私が自動車ディーラーで仕事をしていたとき、お客様に「車検をやったばかりなのに、なぜ故障したの?」と問い詰められることがありました。しかし、車検に通った=故障しない・調子が良い、というわけではありません。車検に通るということは、保安基準に適合したクルマであることの証明をされただけで、クルマの好不調は関係ありません。
具体的には、クルマが真っ直ぐ走るか、スピードメーターは狂っていないか、ライトの高さや明るさは適正か、排気ガスの濃度は適正か、ブレーキの制動力は十分か、下回りや足回りに油脂類の漏れや不整合な部分はないかといった検査をします。
すなわち、公道を走るために、最低限安全に走行でき、他車に迷惑や危害を与えないクルマであることを検査しているだけなので、「安全走行証明」であっても「調子良好証明」ではないということです。
●安く済ませたいならユーザー車検か車検代行専門店
そもそも車検を通すだけならば、必要な費用は決まっています。法定費用と言われる、重量税、自賠責保険料、印紙代です。これらを支払い、ユーザーが自分で居住地にある陸運支局へクルマを持ち込み、各種書類の手続きを行って、検査ラインで検査員の指示に従ってクルマを操作して、クルマが保安基準に適合すればいいのです。この一連の作業を全て自分で行うことがユーザー車検と呼ばれ、最も車検費用を安く済ませる方法です。
上記の作業を専門的に代行する会社があります。車検代行専門店と呼ばれ、ここに依頼し、手続き代行手数料や保安基準に適合しなかった場合の整備費用を支払えば車検を通すことができます。ただし、ユーザー車検よりも手数料分の費用がかさみます。
●ディーラーの車検が高いのはトータルメンテナンスを行うから
自動車ディーラーの多くは、指定自動車整備事業所となっており、整備ラインの中に車検用のラインがあり、整備をするメカニックが自動車検査員の資格を保有しているので、陸運支局へクルマを持ち込むことなく、車検整備が可能です。90分車検などの短時間で車検を通すことができるのは、指定工場として認められており、お店の中で車検を完結させることができるからです。
ディーラーでは、これまで上げてきた法定費用と車検代行手数料の他に、各種部品・油脂類の交換やクルマの好不調を判断し、不調になりそうな部分を整備して、クルマの好調を保つ整備をするため、多くの部品代や工賃が上乗せされます。そのため、ユーザー車検や車検代行専門店よりも、トータルでかかる車検費用が高くなってしまいます。
ディーラーとしても、車検整備を依頼されているので、安全安心なクルマをユーザーに手渡すという責務があり、中途半端な状態での整備・引き渡しは基本的にありません。車検という部分に限って言えば、整備しなくてもいい部分も整備するので、余計に費用がかさむケースも多いです。
●まとめ「お金をかけるか、節約するか。愛車の状況も含めて考えよう」
車検は、クルマに乗るために必要な法律を守る行為です。必要最低限の費用で、その後のクルマのコンディションも自分で判断できるというのであれば、ユーザー車検を選択するのも一つの方法ですし、安心代金と割り切ってトータルメンテナンスを行ってくれる自動車ディーラーに依頼するのも良いでしょう。
仕組みとルールを理解した上で、それぞれに合った方法で車検を受ければ、より有意義なカーライフを送れるはずです。
※写真はすべてイメージです。
(文:佐々木 亘)