目次
■最大の課題はインフラ整備
●ハイブリッドと同等の価格競争力を
2014年にトヨタ・「ミライ」、2016年にはホンダ・「クラリティ」の燃料電池車(FCV)が、700万円台で市販化され、再び燃料電池車が注目されました。
「究極のエコカー」と呼ばれ技術進化を続けている燃料電池車の最新技術やメリット、課題について解説していきます。
●燃料電池車とは
燃料電池車は、車載タンクに充填した水素と大気中の酸素を反応させて発電する燃料電池の電力を使って、モーターで走行します。EVの2次電池の代わりに燃料電池を搭載したシステムで、通常のガソリン車がガソリンを補給するように、水素を補給します。
燃料電池車は、以下のような多くのメリットがあり、究極のエコカーと呼ばれています。
・燃料を燃焼させないので、原理的には発生するのは水のみで有害な排出ガスが出ない。
・エネルギー効率が、ガソリンエンジンの約2倍と高い。
・水素を製造するために天然ガスやエタノールなど石油以外の多様な燃料が利用できる。
・充電が不要で、1回の水素補給でガソリン車並みの走行ができる。
●燃料電池車の基本構成
燃料電池車は、燃料電池スタックと高圧水素タンク、発生した電気を充電する補助電池、駆動モーター、モーターへの電力供給を制御するコントローラーで構成されています。
燃料電池スタックは、水素と酸素を化学反応で発電する燃料電池セルを、数百枚ほど直列接続して1ユニットにまとめたものです。高圧水素タンクには、通常70MPaの高圧水素が充填されており、耐圧強度を確保するために炭素強化繊維プラスチックなどで構成されています。補助電池は、充放電可能な2次電池で、減速回生エネルギーによって充電、加速時にアシストします。
●燃料電池の作動原理
自動車用には、小型軽量化の固体高分子型の燃料電池が使われます。電池セルは、水素が供給される水素(-)極、酸素(空気)が供給される酸素(+)極と、2つの電極に挟まれた固体高分子の電解質膜で構成されています。
水素極に供給された水素は、電極中の触媒によって2個の電子(e-)が放出されて水素イオン(H+)になります。その電子が外部回路を通じて反対側の酸素極に流れることで、電流が流れて電気が発生します。一方酸素極では、供給された空気中の酸素(O2)が、外部回路から流れてきた電子(e-)を受け取り、酸素イオン(O2-)になります。この酸素イオンは、電解質を移動してきた水素イオン(2H+)と結合して、水(H2O)になります。
●今後の課題
2014年発売のトヨタ・「ミライ」と2016年発売のホンダ・「クラリティ」の燃料電池車は、技術的、性能的に大きな違いはありません。
販売価格は、723.6万円(ミライ)/766万円(クラリティ)、FCスタック最高出力114kW(ミライ)/103kW(クラリティ)、タンク容量122.4L(ミライ)/141L(クラリティ)、航続距離650km(ミライ)/750km(クラリティ)です。
燃料電池車の技術的な課題は、依然としてコストと耐久性です。車両価格はガソリン車の概ね2倍ですが、これは燃料電池のシステムコストの高さに起因しています。HEVと同等の価格競争力を有するためには、システムコストを2015年時点の1/4程度まで低減する必要があります。
最大の課題は、技術的な課題よりインフラ整備かもしれません。水素ステーションの整備と安価で安定した水素供給体制の構築が、販売価格に大きく影響し、普及のカギです。
究極のエコカーと言われて久しい燃料電池車ですが、注目されては沈静化することを何回も繰り返しながら、技術は着実に進化しています。将来有望な環境技術であることは確かですが、水素インフラの拡充など課題解決のための具体的な筋道は、いまだ不透明です。
(Mr.ソラン)
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