目次
■AT比率の高い日本では大きな社会問題
●周辺検知センサーで誤発信を防ぐ
自動運転とは直接関係ありませんが、安全のための運転支援技術としてAT誤発進抑制制御があります。AT車の誤発進による事故は、AT車の新車比率が95%を超える日本では、大きな社会問題になっています。
すでに多くの車種で採用しているAT誤発進抑制制御について、解説していきます。
●AT誤発進とは
クルマ側の不具合でないAT誤発進のほとんどは、アクセルとブレーキを踏み間違えるドライバーのミスによる事故です。ブレーキを踏むつもりで間違ってアクセルを踏んで、急発進・急加速することによって起こる事故です。
AT誤発進事故は、ATの歴史とともに発生しており、特に新車のAT車比率が95%を超える高齢者社会の日本では、大きな社会問題となっています。
●誤発進対策
かつては事故のたびにメーカーが責任を問われることも多く、メーカーはアクセルペダルとブレーキペダルの配置の適正化やシフトロック機構(ブレーキを踏んでないとシフトレバーがPまたはNから動かない)などで対応してきましたが、効果は限定的でした。
最近になって、運転支援技術の自動緊急ブレーキ(AEB)の普及とともに、周辺検知センサーを用いて誤発進を抑制するシステムが普及し始めました。
●AT誤発進抑制制御
すでにすべてのメーカーがAT誤発進抑制制御を採用しています。各社システムの名称は異なりますが、一般的には以下のように作動します。
駐車操作など停止または車速約10km/h以下の低速走行時、進行方向(約4m範囲内)に建物や壁などの障害物がある場合にアクセルを一定以上強く踏み込んだとき、警報とともに自動的にエンジンの出力を抑え、急発進や急加速を抑制します。さらに障害物に接近すると、ブレーキが作動します。
障害物の検知方法は、メーカーによって異なり、赤外線レーザーやステレオカメラ、超音波センサー、ソナーなどが使われています。前進のみ対応と、前後進に対応できるシステムがあります。
・トヨタ「インテリジェントクリアランスソナー」
クラウンや新型プリウスは、ソナーを使って前方・後方の障害物を検知します。
・日産「踏み間違い衝突防止アシスト」
デイズルークスは、赤外線レーザーを使って前方障害物を検知し、ノートはソナーで前方・後方の障害物を検知します。
・ホンダ「誤発進抑制機能」
フィット、N-BOXは、赤外線レーザーで前方障害物を検知します。
・スバル「AT誤発進抑制制御」
レガシィ、インプレッサは、前方についてはステレオカメラで障害物と人を検知し、後方についてはアクセル踏み込み量で誤後進を検知します。
・マツダ「AT誤発進制御」
CX-5は、赤外線レーザーで前方障害物を検知し、超音波センサーで後方障害物を検知します。
●AT誤発進抑制制御の課題
採用している各センサーの検知能力には、限界があります。
赤外線レーザーや超音波センサーは、レーザーや音波が反射しにくい材質の障害物や網目状のフェンスなどには機能しません。また赤外線レーザーやカメラは、夜間や雨天などの悪天候、悪条件では性能が低下します。超音波センサーは3m程度までの近距離しか検知できない弱点があります。
高齢者に限ったことではありませんが、相変わらず踏み間違いでコンビニや病院に突っ込んだという事故を耳にします。AT誤発進抑制制御の作動には限界があることから、あくまで補助的な抑制であって完全には防止でないことを認識しておくことが重要です。
(Mr.ソラン)