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■日本ではJNCAPとして結果を公表
●2014年から予防安全性能評価も追加
NCAPは、新しく発売されたクルマを衝突させて、乗員の安全性を評価する自動車衝突試験/評価プログラムです。2014年から従来の衝突安全評価に加えて、予防安全性能の評価が追加されました。
運転支援や自動運転にもつながるNCAPの予防安全性能の評価について、解説していきます。
●NCAP(New Car Assessment Program)とは
NCAPは、市場投入された新車を衝突させ、衝突時の乗員の安全性を評価し、結果を点数にして公表するプログラムです。法規ではありませんが、国ごとに独自の方法で実施されています。
日本ではJ(Japan)NCAPと呼ばれ、国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)によって評価され、「自動車アセスメント」結果として毎年2回公表されています。
従来のJNCAPは、6パターンの衝突安全試験で構成されていました。
・フルフラップ前面衝突試験
車速55km/hでクルマの前面全体を壁にぶつける正面衝突
・オフセット前面衝突試験
クルマの前面の一部(運転席側の4/10)を、車速64km/hで壁に衝突
・側面衝突試験
静止車の運転席側の側面に台車(重量950kg)を車速55km/hで衝突
・歩行者頭部保護性能試験
ボンネットに頭部を模したダミー(インパクター)を車速35km/hでたたきつけ、障害値を計測
・後面衝突頸部保護性能試験
停車中に後ろから衝突された状況を再現、乗員の頸部に受ける衝撃の度合いを計測
・ブレーキ性能試験
車速100km/hで急制動、停止するまでの距離を計測(乾燥路面と濡れた路面)
●JNCAPの予防安全性能評価
2014年から上記の衝突安全評価に、以下の予防安全評価の試験が追加されました。
・対車両と対歩行者の緊急自動(被害軽減)ブレーキ
・車線はみ出し警報
・後方視界情報(バックビューモニター)
2017年度の予防安全性能評価では、軽自動車(8車種)と乗用車(14車種)の中で、日産「ノート」とマツダ「CX-8」が満点で最高評価でした。
●自動緊急ブレーキシステム
予防安全の基本は、危険を察知してブレーキをかける自動緊急ブレーキ(AEB)システムです。ブレーキ性能は、障害物を検知するセンシング技術に大きく依存します。採用されているセンサーは、大きく分けて3種類あります。
・ステレオカメラ方式
2つのカメラを使用するステレオカメラ方式は、障害物の形状(人間、自転車など)が認識でき、ある程度の角度で中距離(100m程度)まで検知できます。逆光や雨、霧などの悪天候によって視界が悪くなると、機能が低下するか、システムが機能しなくなります。代表的なのは、スバルの「EyeSight(アイサイト)」です。
・赤外線レーザー方式
指向性の強い赤外線レーザーを照射して、反射波で検知する方法です。検知距離は30m程度と短く、低速30km/h以下までしか検知できません。コストが安く、軽自動車などに採用例が多いです。VW「スマートエマージェンシーブレーキ」、ダイハツ「スマートアシスト」などで採用されています。
・ミリ波レーダー方式
カメラ方式より遠方(150~200m)まで検知でき、天候に左右されることなく高速でも信頼性が高いため、高速走行頻度の高い欧州車の多くが採用しています。
一方で、形やサイズなどの詳細な識別はできず、歩行者のように電波を吸収しやすい対象物は検知できません。システム全体が大きく、コストは3種の中で最も高くなります。
三菱「衝突被害軽減ブレーキ」、マツダ「スマートブレーキサポート」、ボルボ「ヒューマンセーフティ」などで採用されています。
実際には、あらゆる状況で精度良く対応するために、これらの3種を複数組み合わせた「複合型」の採用例が多いです。トヨタの「Safety C」は単眼カメラ+レーザーレーダー、「Safety P」は単眼カメラ+ミリ波レーダーの複合型です。
今や予防安全技術が搭載されてないクルマは売れないと言われるほど、一般ユーザーにその重要性が浸透しています。
特に高齢化ドライバーが多い日本では、自動緊急ブレーキシステムは必須です。「ぶつかっても安全なクルマ」から、「ぶつからないクルマ」へと要求が変わっています。
(Mr.ソラン)