■若い世代の運転免許人口が減少する一方、高齢運転者は増加の一途
国連の世界保健機関WHO(World Health Organization)は65歳以上を「高齢者」と定義している。
日本の「高齢者医療確保法」では、65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者という。
高齢者の交通事故が連日報じられる。報じられない日がないと言っていい。
クルマの運転は、瞬時にさまざまな情報を脳内で処理し、ハンドルやブレーキやアクセルやウインカーを的確に操作しなければならない。高齢になるとそういう処理や操作が鈍くなるのだそうだ。ブレーキとアクセルの踏み間違いに高齢者はなかなか気づかず、気づいても即座に踏み換えができず、重大事故につながったりする。
それにしても、高齢者の事故がこれほどまでに連日報じられるのはなぜか。
高齢者の運転能力が最近急に衰えたのではなく、高齢運転者が増えたからではないか。そう思って警察庁の「運転免許統計」から年齢層別の運転免許人口を調べてみた。
(ブルーのグラフが2008年、オレンジのグラフが2018年の数字)
まず、若い世代から見てみよう。
【2008年】
16〜19歳:118万1995人
20〜24歳:564万7256人
【2018年】
16〜19歳: 88万3574人
20〜24歳:474万1391人
やはり少子化の影響か、減っている。
2018年も2008年も、20歳~24歳がどかんと増えている理由は何だろう。
普通車と大型自動二輪の免許は18歳から取得できる。大学、短大、専門学校を卒業して就職するとき、仕事のため免許を取得する人が多いのか。
高卒で仕事が安定してそろそろ通勤や趣味でクルマが欲しくなり、免許を取得するのか。
原付バイクと普通二輪の免許は16歳から取得できる。そのへんも見てみた。
【2008年】
16歳: 4万7946人
17歳:11万0944人
【2018年】
16歳:1万9859人
17歳:4万6112人
こちらの減り幅はかなり大きい。若者のバイク離れの深刻さがうかがえる。
さて、高齢者である。高齢層の免許人口はこの10年間でどう変化したか、びっくりしないでほしい。こうだ。
【2008年】
65〜69歳:529万5074人
70〜74歳:349万0588人
75〜79歳:194万7045人
80〜84歳: 87万5844人
85歳以上 : 21万8577人
【2018年】
65〜69歳:733万7914人
70〜74歳:565万8642人
75〜79歳:337万3202人
80〜84歳:165万0344人
85歳以上 : 61万4773人
なんと、高齢者、それも後期高齢者の増え方が著しい。
「80歳過ぎたら免許を返上しろよ」という意見が多いかもしれないが、じつは80~84歳の免許人口は2倍近くにふえ、85歳以上は3倍近くに増えているのである!
高齢者の割合が多い社会を高齢社会という。日本は高齢社会先進国だそうだ。欧米諸国も高齢化は深刻だ。
馬力や見栄えを競わず、事故りにくく、事故っても自他の被害が小さくすみ、若い世代も日常の足として使いたくなる、そんな超小型モビリティ、マイクロカーの先進国になるチャンスと私は思うのだが。
(今井亮一)