「スーパーフォーミュラ・バーチャルシリーズ」開幕。初戦のイオンモール座間は実戦と変わらぬ大興奮!

■グランツーリスモSPORTによるスーパーフォーミュラの戦い

●2019年は3か所のイオンモール+鈴鹿で開催。

今年からシャシーを一新し、いっそう面白さが増した日本の頂点レース「スーパーフォーミュラ」。しかし話題はシャシーだけじゃありません。PlayStaion用ソフト「グランツーリスモSPORT」およびイオンモールと連携して、JAF(日本自動車連盟)認定のバーチャルレースを始めたのです。題して「スーパーフォーミュラ・バーチャルシリーズ」。今回は、初開催となった神奈川大会を観戦してきました。

会場となったのは神奈川県座間市にあるイオンモール座間。1階のノースコートにはスーパーフォーミュラのマシンとともにグランツーリスモの試遊台がドーンと設置され、開店の10時とともに当日エントリーのお客様が長い列を作ります。結局、事前エントリーの方と合わせた約70名が、タイム形式の予選(舞台は富士スピードウェイ)に挑むことになりました。

予選は11時、12時、13時という3組に分かれて実施。ここでタイムのよかった上位12名が準決勝に進出し、さらに6名に絞られて決勝レースを戦うという流れです。

ちなみに2019年のバーチャルシリーズは、座間(神奈川大会)、むさし村山(東京大会)、津南(三重大会)という3か所のイオンモールで実施予定。各大会のトップ2名が、10月27日に鈴鹿サーキットで行われるグランド大会への出場権を獲得するという仕組みです。

●世界で戦う「グランツーリスモ使い」の方々が

さて、会場を見渡してみると、「グランツーリスモSPORT」のオンラインレースで活躍しているトップランカーの方々がいらっしゃいます。ちょっと話を聞いてみましょう。

昨年、モナコで行われた「グランツーリスモSPORT」のワールドファイナルに進出した菅原達也さん(ドライバー名「くろみ」さん)は、「マシンの速度域が高いので操作はシビアですね。決勝レースが短いので、予選で上位に食い込んでおくことが重要です」とひとこと。実際に11時組の予選でトップタイム1分22秒539をたたき出しました。

リアルレーサー養成プロジェクト「GTアカデミー」で2015年の日本代表に選ばれた高橋拓也さん(ドライバー名「カルソニック」さん)は、予選13時組。「こういうイベントでの勝負は、普段のプレイ環境とは違う筐体やモニターにいかにアジャストさせるかが大事です。僕はそこは自信があります」とのこと。実際、きっちりとタイムを詰めて、最後にただ一人21秒台に入る1分21秒735をマークしました。

もうお一人、昨年のワールドファイナルに参加された吉田匠吾さんは、自分のレーススケジュールを考えて今日は観戦組。「スーパーフォーミュラはダウンフォースも効くし、ハコのクルマとは違う走り方が必要」とのことで、エントリーしたプレイヤーの走りを興味深そうに見つめていました。

●11歳の参加者に未来を感じる

準決勝に進出したプレイヤーで個人的に着目したのは、11歳の大村天弓(あゆみ)君。お父様がアマチュアレーサーでご本人もジュニアカートで活躍するドライバーです。惜しくも決勝進出はなりませんでしたが、ドライビングポジションが決まらないハンディもなんのその。大人の中にまじってもまったく気後れしない堂々たる戦いっぷりは、将来の可能性を予感させるものでした。

決勝を前にして行われたのは、レーシングドライバーの千代勝正選手とイオンモール副社長の千葉清一さん(レーシングスーツで参加!)を交えたエキシビジョンレース。千代選手はリアルレーサーのプライドをかけて善戦しましたが、百戦錬磨のグランツーリスモ使いたちの前には苦戦が隠せず、上位入賞は果たせませんでした。

 

●トップ3がバトルを演じる大接戦

待ちに待った決勝レースが始まったのは15時半。富士スピードウェイを6ラップする戦いです。

参加したのは、カルソニック、くろみ、ミチタカ、りおねる、ユウタ、にころずという6選手。スタートではフロントロウのくろみ選手がダッシュに成功し、先頭で1コーナーに飛び込みます。しかしカルソニック選手が立ち上がりで並びかけ、コカコーラコーナーで見事にオーバーテイク。以後は2台の接戦が続きます。

このまま二人のレースになるかと思われたファイナルラップ。じわじわと追い上げていた3番手のりおねる選手が勝負に出ました。実はこのりおねる選手、いばらき国体の全国対抗eスポーツ選手権のグランツーリスモSPORT少年の部予選でトップになった強者。アドバンコーナでブレーキングミスをしたくろみ選手を見逃さず、300Rで並びかけると、ダンロップコーナーで前へ。今度はトップを行くカルソニック選手を追いかける展開となります。

3位になったくろみ選手も追いすがり、3台が息を飲む展開を見せる終盤。勝負は最終コーナーに絞られましたが、カルソニック選手の立ち上がりが最速でした。結局、わずか0.139秒差でカルソニック選手が首位に、2位にはりおねる選手が入りました。観客の皆さんが盛大な拍手を贈る中、「スーパーフォーミュラ・バーチャルシリーズ」の初戦ウィナーが決まったのです。

●モータースポーツの興奮がここに

レース後、カルソニックこと高橋選手に話を聞くと、今年からプロゲーマーとなり、今回が初のレースだったとのこと。その分「必ず勝とう」という闘志も強く、今日は出発直前まで自宅で走りこんでいたそうです。今回のレースについては、「予選、準決勝、決勝とトップ通過だったけれど、決勝最終ラップでは(自分に優先権があったとはいえ)、くろみ選手のラインを潰すような恰好になった点は申し訳ない」とコメントしました。

大勢の人が楽しそうに行きかうイオンモールの一角で、まさかここまで白熱した真剣勝負が行われるとは、正直思っていませんでした。実際のスーパーフォーミュラ同様、このバーチャルシリーズも盛り上がってきそうな気配です。

次戦は8月11日、武蔵村山のイオンモールむさし村山での東京大会。ここでも熱戦を期待しましょう!

(文と写真:角田伸幸)

この記事の著者

角田伸幸 近影

角田伸幸

1963年、群馬県のプロレタリアートの家庭に生まれる(笑)。富士重工の新米工員だった父親がスバル360の開発に立ち会っためぐり合わせか、その息子も昭和期によくいた「走っている車の名前が全部言える子供」として育つ。
上京して社会人になるも車以上に情熱を注げる対象が見つけられず、自動車メディアを転々。「ベストカー」「XaCAR」で副編集長を務めたのち、ポリフォニー・デジタルにてPlayStation用ソフトウェア「グランツーリスモ」シリーズのテキストライティングに携わる。すでに老境に至るも新しモノ好きで、CASEやパワートレインの行方に興味津々。日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定取得。大好物は豚ホルモン(ガツとカシラ)。
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