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●車幅拡大の一方、ホイールベースは短縮
こんにちは、花嶋言成です。今回の題材はBMWの新型Z4です。2003年にZ3から上級移行するかたちで登場したZ4は、2009年の2代目を経て今年、現行モデルへ生まれ変わりました。本企画独自の長距離試乗でその姿に迫っていきましょう。
筆者は現在、Z4ロードスター3.0iの初代モデルを所有しており、まだZ3が現役のころからたっぷりテストしてその進化を見つめ続けてきました。新型はトヨタとの共同開発ということで、何年も前から話題を呼んでいましたが、それは旧来のBMWファンからすると疑念を抱かせる部分でもありました。トヨタ流のクルマづくりに偏った、たとえばコスト意識がとても強いモデルになるのではないか、と。
しかしスペックを先代と比較する限り、妥協したような傾向は見られません。価格は566〜835万円で先代と概ね同等。全長4335×全幅1865×全高1305mmのボディサイズは、先代よりやや拡大傾向で、とりわけ操縦安定性の改善を目指して車幅を拡げたのは最近のトレンドどおりです。にもかかわらず車重は、同じ6気筒340psモデル同士の比較で先代比30kg減の1570kgとなり、ハードトップからソフトトップへの変更も含め軽量化を果たしたことが反映されています。
いっぽう、初代から2495mmを保ってきたホイールベースは25mm短縮の2470mmとなっており、敏捷性をさらに高めようとしていることが推し量れます。
こうしたプロポーションの変化は、新型Z4の外観に明らかな変化を与えています。ロングノーズ・ショートデッキの代表格であった初代との比較ではさらに明確ですが、新型はフロントマスクとテールの存在感が大幅に強くなりました。
タイヤの前後にぶら下がっている体積が大きいということは、ヨー慣性モーメントの増大を意味しますから、スポーツカーとして不利なのではという声もあるかもしれません。しかし最新の空気力学を用いれば、路上の専有面積が大きいほうが高速でダウンフォースを生みやすくなり、とりわけ改造が制約されるGTレースに参加する場合は有利だという意見もあります。
さらに想像を膨らませてみたいところですが、私、花嶋の役割は、この新型Z4に消費者目線で正面から向き合って、いまこのクルマに興味を抱いている方々が仮に実際に入手されたとき気づき、思い至るであろうことを書き記すことだと考えています。極端に入り込むことは控えて本題に移り、さっそくいつものコースを走らせることにしましょう。