【プレミアムカー定点観測試乗】トヨタっぽさは垣間見えるのか? BMW Z4 M40i(前編)

●快適・重厚が際立つシティライド

新型Z4に197psの4気筒ターボと、340psの6気筒ターボのエンジン2種・4グレードが用意される中で、試乗車として借用できたのはハイエンド・モデル「M40i」でした。4気筒モデルが566〜665万円なのに対して、この6気筒は835万円と飛び抜けて高価です。しかし、可変ダンパーを備えるアダプティブMサスペンションやMスポーツ・ブレーキ、Mスポーツ・ディファレンシャル、19インチ・タイヤ、安全装備を組み合わせたイノベーション・パッケージが標準装備されることを考えると、6気筒エンジンのプレミアムは実質80万円程度に留まるのではないでしょうか。

初代モデルでフラップ式だったドアハンドルは、がっしりしたレバーに代わりました。バスンと閉まる重厚感は、ペラペラだった初代とはまったく異なる印象を与えます。ドア自体に厚みがあるのはサイドシルが幅広いせいで、これを含む補強によりボディの捩れ剛性は先代より25%向上したそうです。

BMW M社監修となるMパフォーマンスの6気筒エンジンは、スタートすると排気からの低い唸りを響かせます。基本的なサウンドやバイブレーションは昔と変わらないのが馴染みやすいところです。コンフォート・モードでは低速でのスロットル・レスポンスも穏やかながら、加減速にかかわらず常にこの低い排気音がドライバーに自己主張を伝えてきます。

アダプティブMサスペンションが示す乗り心地の快適さは、嬉しい驚きとして捉えられるでしょう。街中では、大きな19インチ・タイヤが揺動している事実こそ隠しきれないものの、それをすごくしっかりしたボディが受け止めるのと、意外と柔らかな身のこなしなので、乗員に不快感を与えません。

よく観察すればホイールベースの短さを反映したピッチングの動きはありますが、トレッドが広いこともあって全体としては落ち着いています。コンフォートモードで街を流していると、いわゆるスポーツセダン、しかも大きめなものを走らせているのとまったく変わらない乗り心地です。ロードノイズが若干大きいことで区別できる程度でしょう。ECO PRO設定では、エンジンや変速のレスポンスが鈍くなるので、なおさら普通のクルマっぽくなります。

オープンカーとしてのZ4はどんなクルマでしょうか。フル電動のソフトトップは全閉から全開までが11秒、逆に閉めるのには10秒弱を要するだけでした(ドアガラスの上昇下降は含まず)。これは実は、同じくソフトトップを採用していた初代Z4とほぼ同じ所要時間です。昔からかなり動作が速かったんですね。

スポーツカーとしては比較的Aピラーの傾斜が強いためか、屋根を開け放つと頭上には常に空の存在を意識します。それでも新型Z4にはウィンドディフレクターが標準で備わるおかげで、窓を閉めた状態で街中をクルージングしていると、身長172cmに合わせたドライビング・ポジションでは、ほとんど風圧は気になりません。

電動パワーシートは座面をかなり低くすることが可能で、座高98cm程度の人まではソフトトップに頭を擦らずにすむでしょう。逆に座高の低い人が乗る場合は、座面を高くしないと丸いボンネット前端までの距離が掴みにくいかもしれません。市街地ではアイドリングストップが頻繁に作動するせいか、エアコンが設定温度に対し暑かったり寒かったり不安定なことがやや気になりました。