電気モーターに多段変速時代がやってくる | 人とくるまのテクノロジー展2019 横浜【週刊クルマのミライ】

■変速機構を持つ電動アクスルが時代のトレンド。電気自動車のパフォーマンスアップに期待

今年もパシフィコ横浜にて公益社団法人 自動車技術会により「人とくるまのテクノロジー展 2019 横浜」が開催されました。自動車メーカー、サプライヤー、エンジニアリング会社など自動車技術にかかわる企業が624社も集まった自動車技術専門展としては日本最大級の展示会です。

自動車業界全体としては「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)」がトレンドですが、人とくるまのテクノロジー展で感じたのは電動化に対する熱量が増えていることです。

とくに2019年は『eAXLE(イーアクスル)』をキーワードに、各社が盛り上がっていました。eAXLEというのは駆動モーターとトランスアクスル(会社によってはインバーターまで)を一体化したものです。とくにディファレンシャルとモーターを同軸上に配置することはユニットの小型化につながります。サプライヤーとしては自社の領域が広がりますから、このトレンドには大いに乗り気というわけです。

さて、そうしたeAXLEトレンドの中で、さらなる流れが生まれています。それはモーター駆動の多段化です。

EVに多段トランスアクスルをプラスすることでカバーできる速度域を広げるという考え方はずいぶん前からありましたが、現状では変速比を固定しているワンスピードタイプの電動車両が多数派です(トヨタのFR系ハイブリッドに変速機構を持つタイプがあるくらい)。

速度無制限のアウトバーンがあるドイツを除くと、グローバルに見ても制限速度の上限は130km/h程度であり、それであればモーターのカバー範囲に収まるためあえて変速させる必要がないというのが、従来の見解です。変速することで効率が上がることはわかっていても、それによる段付き感が電動車両のスムースさをスポイルしてしまうことやシステム構成要素が増えてしまうことも、あえて多段変速機を使う必要がないと判断されてきた面もあります。

しかしeAXLEによって電動車両の駆動系がパッケージされるとなれば、その中に2段変速機を組み込むことはスペース的にはさほど悪影響を与えない範囲で可能になりました。さらに2段変速であればプラネタリーギアが1つあれば可能です。そのためeAXLEの展示品のなかには2スピードタイプ(2段変速機構付き)をチラホラ見かけることができました。

そのメリットは、高効率とパフォーマンスアップです。たとえばアイシングループの展示していた2スピードタイプのeAXLEはシステム効率が2.8%向上、最高速においては150km/hから230km/hへと大きく伸びています。また、電気モーターは反応速度が抜群に速いため、変速ショックを吸収することも可能です。そのために必要な磁気式トルクセンサはNSKのブースにて確認することができました。乗員がシフトショックを感じないシームレス変速が可能になれば、電気モーターに多段変速機を組み合わせてもネガは感じないであろうというわけです。

もちろん、変速機構をプラスしたぶんだけ部品コストは上がるので、車両価格も高くなってしまうのですが、いまや高級車においても電動化が無視できない時代です。多段変速機を備えた電動車両が登場するのも、そう遠い未来の話ではないのかもしれません。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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