■見事!ウェットを味方に付けた「Modulo KENWOOD NSX GT3」
4月14日に岡山国際サーキットで決勝レースが開催されたSUPER GT 2019の開幕戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」。この日、11時くらいから本格的に降り始めた雨がレースの内容を大きく変えて行きました。
予選13番手からスタートのModulo KENWOOD NSX GT3にとっては、ウェットコンディションは上位へ上がるためのワンチャンスと言えるかもしれません。
決勝レース直前のウォームアップ走行では道上選手がドライブを担当し、まっさらのレインタイヤを入念に皮むきすることに専念しているかの様子。20分の走行で2回のピットイン、スタートに使うタイヤを含めて3セットの皮むきを行っています。
雨の状況次第では性質の違うレインタイヤをすぐに履きかえられるようにと、グリッドウォークの最中もタイヤ交換の準備がなされています。スタートドライバーは道上選手。
フォーメーションラップが始まる14時30分、雨の強まりからスタートはセイフティーカー(SC)スタートとなり、3周のSC走行の後にレースのスタートとなりました。しかしスタートの切られた直後の4周目にGT300クラスで2台が絡むクラッシュが発生しSC導入。
11周目に再スタートとなるとSC導入で差の詰まった前走のライバルを道上選手が猛プッシュ。13周目に耐え切れなくなったライバルは姿勢を崩し失速すると道上選手はそのライバルを華麗に抜いていきます。その直後、道上選手に続こうとした後続のライバルに先ほど抜かれたライバルが接触。その弾みで抜かれたライバルはモスSコーナー付近でクラッシュし、飛散したパーツを避けようとした後続車もクラッシュという多重クラッシュが発生して再度SC導入のうえ、処理のために赤膚中断となったのです。
道上選手曰く「走ってはSC、走っては赤旗。タイヤが温まるタイミングが無かった」とのこと。タイヤが温まりプッシュを仕掛けるとどこかでクラッシュが起こりタイヤのコンディションが振出しに戻ってしまうということとなったのです。
15時45分に赤旗解除でレースが再開されると順位は10位まで上がっています。コース上はウェットと言うよりはすでに川、または池とも言える状態で抜きにかかるために前走車に接近すればウォータースモークで視界がまったくなくなるという状況。そんな中、SCや赤旗の影響でまともにレースとして走ることのできた周回はたった3周。その少ない周回数でライバルが2台消え、1台を追い抜いて順位を3つもあげていることには速さというよりも強さを感じずにはいられません。
そして赤旗解除後、SCが抜けた瞬間からまたもや前走のライバルをプッシュしていきます。接近すれば視界ゼロ。しかしそんな中でも背後でプレッシャーを与え、隙あらば鼻先をインに差し込んでいこうとする道上選手。そんな超接近戦が延々と続いていきます。
このときの様子を道上選手は「こっちと向こうでクルマの特性が全く違うから、こっちが得意なところと向こうが得意なところが交互に来ちゃうんですよ。だからもう少しというところで抜ききれない。抜けるかな?と思ったら今度はSC。SCのタイミングはかなり厳しかったですね」
その言葉通り24周目にGT500クラスのトップ2台が接触するというアクシデントで4回目のSC導入。その後SCランが6周ほど行われて赤旗が掲示されることとなります。
その赤旗を以ってレースは終了。上位勢のペナルティーもあってModulo KENWOOD NSX GT3は9位でレースを終えました。
レースを振り返ってのインタビューの最後に道上選手は「ドライバー交代が無かったのが残念。大津にウェットを走らせたかったなぁ」と語ります。
聞けば、大津弘樹選手はSUPER GTでは昨年一度もウェットでの決勝レースを経験していないので今年の開幕前のテストでは積極的にウェットを走りこんだとのこと。「セパンでのテストも雨が降れば乗らせてくれ乗らせてくれって言うんですよ。岡山テストのときはウェットを2時間走りっぱなしでしたからね。僕なんかクルマ壊したくないから雨のときは乗りたくないのに大津は本当に雨での経験を積んで来ましたから」と語る道上選手。
クラッシュ8台、リタイア7台というサバイバルレースを粘り強さで生き残り、9位となった開幕戦。レース自体は規定周回数の75%未満での終了ということでハーフポイントにはなってしまったが、それでも貴重な1ポイントを獲得。ハーフポイントであるがゆえに優勝チームとの差が9ポイントで、充分上が見える場所に位置しています。
次戦の富士500kmはModulo KENWOOD NSX GT3がストレートの速さを活かせるサーキット。好成績が期待できるのではないでしょうか。
(写真:吉見幸夫、松永和浩 文:松永和浩)
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