【三菱デリカD:5 アーバンギア 高速道路試乗】レーシングエンジンに使う加工方法が施され、軽快なディーゼルユニット

【軽快なディーゼルエンジンがもたらす「トリプルウィン」の効果とは?】

日本で唯一のSUV志向ミニバンとして人気を誇るデリカD:5。そのデリカに大規模マイナーチェンジが施されました。縦型ヘッドランプを核とした大幅エクステリア&インテリアチェンジと、パワートレインの刷新がその内容です。

この大規模改良時に、新しい方向性として都市型志向の内外装を持つデリカD:5『アーバンギア』(406万7280円~420万7680円)の追加設定もなされました。

今回、このアーバンギアに試乗する機会がありましたので報告します。

外装のフロントでは、標準モデルと同一のライト類を装着しながらもグリルやバンパーの造形を専用のものとしています。

標準モデルがハニカム形状であるのに対し、アーバンギアでは水平方向を強調した横長のグリルを採用しました。またバンパー下部もスポイラー的な処理をして差別化しています。

他にテールのガーニッシュ等も独自のものとしました。

インテリアに関してもアーバンギアには特徴があります。

今回の最新デリカD:5では、大規模改良に伴ってインパネは水平基調の新型タイプに変更されました。標準モデルではこのインパネにブラウン系のサバ杢材というものを使っています。一方でアーバンギアではバール杢材と言う黒い木目調アクセントパネルを採用しています。

また今回の試乗車では、新たに設定されたメーカーオプションの本革シートも装着されていました。

実際に試乗してみます。

ほぼ全体にわたって手が入った2.2Lのディーゼルターボエンジンの最高出力は145ps(107kW)/3500rpm、最大トルクは38.7kg・m(380N・m)/2000rpmです。

アイドリング時や低速走行時にはディーゼル特有のサウンドが響いてきますが、そのボリュームは従来モデルに対してかなり減っています。

また、回転を上昇させていった際も、パワーユニットから生じるノイズは抑えられています。車内は静粛性が非常に高いのが特徴なのでした。

この「静かさ」には大きく2つの要素が影響しています。

1つ目は、車体全体の制振材や遮音材のボリュームを増して、ボディ側で音をシャットダウンしていること。2つ目は、今回の改良に合わせてエンジンパーツを新設計する過程で、フリクションを減らしてエンジンの精度を高める技術が採用されているからです。

その技術のうちで大きなものがダミーヘッドホーニングとなります。これはエンジンロックのシリンダー内壁加工を、ダミーのシリンダーヘッドを組み付けた状態で行うというものです。

通常はシリンダーヘッドを組まずにシリンダー加工を行うのですが、これでは最終的にヘッドを組み込んだ際に組み付け力によってシリンダーが変形します。微細ではありますが、この変形分がエンジン全体のバランスに与える影響は少なくありません。

しかしダミーヘッドホーニングを行うと、この変形分を抑えることができできるのです。

今回の新型デリカD:5用のエンジンではこの精度の高いシリンダー加工を前提に、ピストン・コンロッド・クランクシャフトの形状を最適化し、ピストンリングの張力を25%低減することができました。

こうしてフリクションロスが大幅に減った結果、トルクも向上。燃費が改善し静粛性も高くなるというウィン=ウィンどころかトリプルウィン状態が完成したわけです。

ちなみにこのダミーヘッドホーニングはレーシングカーのエンジン作りでは当たり前の手法。しかし一般的なエンジンでは現行NSXや初代NSXタイプR(3.2Lモデル)といったスーパースポーツ車でしか使われないようなものです。

今回の新型デリカD:5では、他にも新開発8速ATなど技術的な見どころは多いですが、まずはこのレーシーな成り立ちのエンジンを試してみるだけでも、ディーラーにおもむく価値はありそうです。

(写真・動画・文/ウナ丼)

この記事の著者

ウナ丼 近影

ウナ丼

動画取材&編集、ライターをしています。車歴はシティ・ターボIIに始まり初代パンダ、ビートやキャトルに2CVなど。全部すげえ中古で大変な目に遭いました。現在はBMWの1シリーズ(F20)。
知人からは無難と言われますが当人は「乗って楽しいのに壊れないなんて!」と感嘆の日々。『STRUT/エンスーCARガイド』という名前の書籍出版社代表もしています。最近の刊行はサンバーやジムニー、S660関連など。
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