【ミニ・ジョンクーパーワークス・クラブマン試乗】もっとも「ミニらしくないミニ」だが、その性能は高く評価したいモデル

●ミニのミニたるドライブフィールを消し去ったモデル

今年、2019年は初代ミニ(BMCミニ)が登場して60年に当たる節目の年です。初代ミニは現在の軽自動車よりも小さなボディを持つクルマでした。BMWの手によるミニも初代は5ナンバーで登場しましたが、今はずいぶんと立派なボディを持つまでに至っていて、もはやミニという車名は符合でしかないという事態です。

そんなミニのなかでもひときは大きなボディを持つのがクラブマンです。今回試乗したジョンクーパーワークス・クラブマンの全長×全幅×全高は4270×1800×1470mmで、全幅だけでいったらクラウンと同じです。

 

ミニのドライビングフィールは「ゴーカートフィーリング」と称されるキビキビしたクイックな走りで、それを求めるユーザーがマーケットを下支えしています。確かにゴーカートフィーリングは乗って楽しいのですが、ロングツーリングにはむかないタイプのフィールです。ところが「クラブマン」はミニのミニたるドライブフィールを消し去ったモデルなのです。

その最大の要因は2670mmというホイールベースにあります。一般的にホイールベースを長くすると、ドライブフィールはゆったりとしたものになるのですが、クラブマンはまさにその典型と言えます。とにかく乗っていて乗り心地がよく、落ち着いた走りを見せてくれます。ショートホイールベースのミニは、高速巡航時もどこか落ち着きのない走りとなりますが、クラブマンはビシッと真っ直ぐに走ってくれます。

とにかくワインディングが好き、ワインディングで軽快ならば高速道路の長距離移動で疲れてもいい……という年頃(だれにもそういう時代があるものです)でないなら、クラブマンはなかなかの実力者と言えます。

試乗車であるジョンクーパーワークスは231馬力というハイパワーの2リットルターボエンジンを搭載。駆動方式は4WDなのでさらなる落ち着き感があります。ショートホイールベースのミニにくらべて、ゆったりとした走りといってもコーナリングが苦手というわけではありませんし、ジョンクーパーの名に恥じない(ジョン・クーパー氏はF1の名コンストラクターでした)ハンドリングを実現しています。

ショートホイールベースのミニしか試乗したことがない人はぜひ、ロングを乗ってみるべき。ミニに対する印象がガラッと変わります。

(文/諸星陽一・写真/宇並哲也)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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