【マクラーレン570Sスパイダー試乗】サーキットから生まれた本物のスポーツカー。雨の中でもハンドリングは正確でシャープ

●まごうことなきスポーツカー。こだわりのパドルシフトは「押し込み」操作も可能

マクラーレンは、F1ドライバーであったブルース・マクラーレンが立ち上げたレーシングチームにそのルーツを持ちます。

マクラーレンの名が冠されたロードカーは1991年に登場したBMW製エンジンを積むF1(レーシングカーのF1ではなく、F1というネーミング)が最初です。今回撮影試乗したマクラーレン570Sスパイダーは2017年に登場したモデルです。570はエンジンの最高出力(馬力)を示します。最大トルクは600Nmにも上ります。

「スパイダー」の名のとおりオープンエアを楽しめるモデルなのですが、試乗時はかなり強めの雨が降っていたため、今回はオープンエアドライブはあきらめての試乗です。

570Sはクーペ、スパイダーともに「ディヘドラルドア」と呼ばれる特徴的なドアを持つモデルです。これは、フロント1カ所のヒンジを支点に上に持ち上がるドアで、いかにもスーパーカーです。スーパーカーはこうした演出が大切。普通でないことに価値があるのです。

V8・3.8リットルのエンジンは乾いたエキゾーストノートを響かせ、軽快に吹け上がります。アクセルをグッと踏み込めば、リヤミッドに搭載されたエンジンから効率よくリヤタイヤに駆動力は伝わり、クルマをグングン前に進めます。できることなら全開を試してみたいところですが、雨しかも公道ではそれは叶いません。しかし、アクセルを少し強く踏み込んだときの加速だけでも秘めたる底力は十分に伝わってきます。

ミッションは7スピードでオートで作動しますが、ステアリングのパドルスイッチでのアップダウンも可能です。このパドルは面白い構造になっていて、左右がつながっているのです。シフトアップするために右パドルを引くと左パドルが奥に向かって動きます。つまりシーソースイッチです。操作を確実に脳のフィードバックできるとともに、押し込んでの操作も可能と自由度が高いというわけです。

攻め込むというレベルまではいっていませんが、ちょっとスポーティに走った印象では、ハンドリングは正確でシャープ。ねらったラインをキッチリと走れるところはさすがです。

(文/諸星陽一・写真/宇並哲也)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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