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■「自動車用語辞典の燃費その1」JC08モード燃費、WLTCモード燃費とはなんだ?
●JC08モードもWLTCモードも実走行せずシャシーダイナモ上で測定する模擬運転
路上走行ではなく、シャシーダイナモ(C/D)メーターのローラー上で実走行を模擬した運転パターンで走行して、燃費と排出ガスを測定する試験を「モード試験」と呼びます。
モード試験は、より実走行に近づけるように日本の交通事情の変化に応じて改良され、2018年9月までは「JC08モード」試験、2018年10月からは「WLTC」と呼ばれるモード試験法が導入されています。今回はJC08モード試験を例に、モード燃費について解説していきます。
●モード試験とは?
路上走行で燃費や排出ガスを精度良く計測するのは難しく、また結果は運転条件によって大きく変わります。試験車をシャシーダイナモのローラー上で、一般的な走行を模擬した走行パターンで走行させ、燃費と排出ガスを評価するのが「モード試験」です。一連の試験方法や条件設定法は、法規の中で細かく規定されています。
モード燃費はメーカーが国交省から型式認証を受ける際に承認される燃費です。カタログに表示することが義務付けられているので「カタログ燃費」とも呼ばれます。その試験、モード試験は1966年の10モードに始まり、10-15モード、JC08モード、現行のWLTCとなり、より実際の走行を反映させるように改良されてきました。
例えるなら、人がランニングマシーンの上をゆっくり歩き始め、途中でさまざまな速度でジョギングしながら、最終的に止まる、このような一連の決められた運動パターンを終えて、消費カロリーや脈拍数などを測定する、といった同じ土俵で横並び評価するための試験法です。
●モード試験法と燃費計測法
モード試験では、常に同一条件で試験されることが大前提です。
まず、事前に試験車の走行抵抗を計測し、シャシーダイナモメーターに実走行相当の抵抗、負荷をセットします。このとき、試験室の温度と湿度や試験車の暖気具合、車速に応じた扇風機による送風など、環境条件を常に同じにして、実走行相当の条件を作り出します。
3年ほど前に自動車メーカーの燃費不正が発覚しました。三菱自動車の場合は、試験車の走行抵抗結果を改ざんし、シャシーダイナモの負荷設定を実際よりも小さく設定して、燃費を良くみせた不正です。スズキの場合は、走行抵抗を規定された方法と違う独自の方法で計測したという不正です。
●カーボンバランス法
燃費の計測は、排ガス中の炭素成分変化を利用した「カーボンバランス法」で算出します。エンジンに供給される燃料と排ガスに含まれる炭素(C)の量は同じであるという原理にもとづいた算出法です。排ガス中の炭素化合物CO、CO2、HCの重量を計測し、これらに含まれる炭素の重量から、消費した燃料量を算出します。
排ガス中のCO2が多いということは燃料消費量が多い、すなわち燃費が悪いということを意味します。そのため、地球温暖化を抑えるために温室効果ガス(CO2)を減らすため、クルマの燃費を良くすることが求められています。
●新モード試験法WLTCへ変更
2018年10月から燃費・排ガス試験法は、それまでのJC08モードから国際的に統一された試験基準「WLTC(Worldwide-harmonized Light vehicle Test Cycle)」に準じた方式に変更されます。
WLTCモードはJC08モードに比べて「最高車速が高い」「加減速が多い」「走行時間や距離が長い」といった特徴があります。詳細については次項で紹介します。
一般に、モード燃費は実燃費よりも良い値を示します。実燃費がメーカーが公表するモード燃費に近づくには、熟練したドライバーが平坦な道路をエアコンやライトをつけず、渋滞なくスムーズに走行するなど、一定の条件が必要になります。
とはいえ、モード燃費は同一条件での安定した正確な値ですので、そのクルマの相対的な燃費ポテンシャルを示していると考えればよいと思います。
(Mr.ソラン)