湘南から「日本のこころ」へのグランドツーリング。湘南T-SITE「日本の青~Craft Blue powerd by AUTECH JAPAN」レポート

日本の道路を走るクルマを見ると、圧倒的に多いのが白、黒、シルバーではないでしょうか。それでも最近はカタログの設定色に多彩なカラーを用意してみたり、大阪・神戸など関西地区に行くときれいな色味でオーダーされたクルマに乗られているオーナーさんの姿も見かけたりするようにはなりましたが、それでも圧倒的に多いのはモノクロ系の色が主流という傾向は強いように思います。

日産車をベースにきらりと光る個性を与えたクルマを世に送り出している職人集団オーテックジャパン。今では日産のミニバン系を中心にカタログモデルの中心的なラインナップにまで上り詰めた「ハイウェイスター」も、もともとはオーテックジャパンで手掛けた個性派グレードにその起源は遡ります。

そののちライダー、アクシスなど様々なクルマに設定された、ファクトリーカスタムのラインナップの数々。市場での人気は常に上場。新車でもオーダーする人が多いことに加え、中古車市場での流通相場でも、明確にベースモデルとの違いを見せつける人気を維持している車種は少なくありません。

そんなオーテックジャパンが今徐々に拡大している新シリーズが、会社名を冠した「AUTECH」。

外観の加飾もより落ち着いたものになり、外向きにアピールという以上に、オーナー自身が所有する歓びをより強く感じることができるようなコーディネートになっています。そして外観だけではなく、車種によっては「NISMO」シリーズで磨きをかけた走りのクオリティも、落ち着いた外観と共に手に入れることができるようになり、ベース車にオーテックジャパンらしい味付けを施した新シリーズといえるでしょう。

セレナ、ノート、エクストレイルと揃い、早くも人気を博しているAUTECHシリーズ。続いてリーフAUTECHも控えていると言われ、すでに待ち遠しいというファンの方も少なくないかもしれません。

さらに、ベース車には設定がなく、AUTECHでしか選べないカラーがあります。それは、イメージカラーの「AUTECH BLUE」。もともとは湘南・茅ケ崎に本拠地を置くオーテックジャパン。そんな湘南の抜けるような青空と、マリンスポーツファンを魅了して止まない湘南の青い海をモチーフにした湘南の青。けれども、落ち着いた深みと、日の光を浴びると様々な表情を魅せる大人が楽しめる湘南のスタイルを表現したシックなブルーは、モデルによっては約半数の出荷台数でユーザーが選んでいるほど人気を博しているのだそうです。

冒頭ご紹介したような状況からすると、これは相当画期的なことではないでしょうか。

そんな状況で、湘南T-SITEを皮切りに始まったミニ企画展「日本の青〜Craft Blue powerd by AUTECH JAPAN」は、決して大々的な企画ではないのですが、湘南をイメージした、湘南の自動車メーカーのクルマのイメージカラーに端を発した「青で紡ぐこころの旅」を想起させ、なかなか見応えのする企画になっていました。

青はもともと日本古来より、染料、顔料としてもとても貴重で高貴な色とされてきました。例えば、奈良を表す枕詞「あをによし」はかつての都奈良に行くと、あを(青)や、に(朱)の建物が多く美しいことを端的に表したと言われています。青はあるだけで高貴でみやびやかな色とされてきた経緯もあります。そうしたことから、工芸の世界でも青を差し色にしたり、青で染めたりということは古くからおこなわれてきました。

今回のこの企画展は、そんな伝統的な青のもつ重み。それが単に希少であるが故ではなく、そこから日本人のこころの中に宿る「青の尊さに馳せる旅」のように品々が紹介され、幅広い分野の関連書籍が並び「青をテーマにした知的グラツーリズモ」のような編纂がなされている点はとても興味深いものでした。

オーテックジャパンのある茅ケ崎からもほど近い藤沢辻堂の湘南T-SITEを皮切りに、千葉柏の葉、広島とこの企画がキャラバンで各地を巡るというのも「旅情」を感じさせます。

特に印象的だったのは「なみだつぼ」。もともとは古代ローマで、戦地に赴く夫を送り出す悲しみに流した涙を溜めた小壺だったようです。同時に喜びの涙をためたりもしたのだと言います。今のように交通手段の発達していない時代「想うこと」にとても重みのあった時代に何千里もの彼方の大切な人へ、思いを馳せるためのこころよりどころになっていたもの。これを、有田焼で新しく表現した小壺が展示されていました。もちろん文様は青。今だからこそ昔の人がそうしたように、心のグランドツーリングに出るきっかけの品物を、日本の伝統工芸で、しかしいまだかつて試してこなかった新たな挑戦で作り上げている。懐かしいようで新しい。そんな感覚に包まれたものでした。

ブルーオーシャンなどと申します。青は限界や制限を設けない色として、おそらく日本人に限らず海外の人にとっても特別に爽快ですがすがしい色として受け止められていることでしょう。

もちろん会場にはAUTECH BLUEのクルマたちも展示されていました。湘南をスタートして、日本中を青をテーマに紡ぐ旅。そんな「日本の青〜Craft Blue powerd by AUTECH JAPAN」。実は世に送り出してきたクルマの多くの根底に、常にGT性が常に宿っていたオーテックジャパン。そんな彼らが魅せてくれた一味変わったグランドツーリングのような企画展。柏の葉、広島のT-SITEでご覧になってみてはいかがでしょうか。

(中込健太郎)

【関連リンク】

日本の青 Craft Blue powered by AUTECH JAPAN
http://www.autech.co.jp/release/20190124_01.html