【新車試乗 HONDA INSIGHT】ハイブリッド専用ホンダ・インサイトは3代目になって「普通にいいクルマ」に進化した

●試乗車の車両価格は約350万円、乗ってみると価格以上の価値を感じる

さて、試乗したのは中間グレードである「EX」。車両価格は消費税込み3,499,200円となっています。1.5リッターのCセグメント・セダンと考えるとちょっと高めの価格と感じますが、Gathersの8インチ・インターナビや先進安全装備「ホンダセンシング」などが標準装備されていることを考えると、じつは妥当であることに気付きます。17インチのアルミホイールやトランクスポイラーがスポーティさを演出しているのも、EXグレードの特徴です。

ハイブリッドとしてではなく、市販車全体を見渡した中で「純粋にいいクルマと感じてもらえる」ことが開発の基本テーマだったといいますが、そうした狙いは市街地を走っていると実感できます。ステアリング、アクセル、ブレーキの各操作に対する反応がリニアかつ素直で、クルマとしての普遍的な価値が高いと感じさせられるのです。市街地ではモーター駆動だけで走る電動車両ですからリニアリティにおいてエンジン車より有利なメカニズムですが、ことさらにレスポンスを強調するわけではなく、パワートレインのキャラを感じさせない仕上がり。アクセル開度や踏み込む速度に応じて、狙い通りの加速を実現してくれます。

EV走行で加速中にエンジンが始動する際に、おそらく少しばかりの電圧変化があるのでしょう、わずかに駆動トルクの変動を感じることもありましたが、その瞬間以外は雑味のない走りを味わうことができました。モーター駆動ならではのスムースさは誰もが体感できるはずです。

さらに驚くのはブレーキの自然な仕上がりです。ハイブリッドカーですから減速エネルギーによって発電する回生ブレーキとメカブレーキのハイブリッド仕様となっているのですが、よく言われるカックン感やブレーキの反応遅れなどは皆無。2つのブレーキシステムがミックスしているとは思えないほど自然に減速できます。パドルセレクターにより回生ブレーキを3段階に調整できる機能も備えています。

そうした加減速のリニア感をハンドリングの良さが引き立てるのも新型インサイトの美点です。こちらも過度に機敏ということはなく、ステアリングを切っただけクルマが反応するといった仕上がり。フロントの剛性感もあるため応答遅れも感じられません。そこにフルハイブリッドとしての燃費性能、ホンダセンシングによる先進安全性能が加わるわけです。

ハイブリッドというエクスキューズ抜きにして、クルマとして350万円以上の価値を感じるのが、新型インサイトです。

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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