【日産リーフe+試乗】航続距離を伸ばしパワフルになっても室内空間を犠牲にしなかったリーフの大容量バージョン

量産電気自動車のパイオニア、日産リーフに新しいグレードとなるe+が追加されました。新しいリーフe+の特徴は、よりパワフルにそして長く走れることです。

リーフe+はバッテリー容量を55%アップ。最高出力を45%アップ、最大トルクを6%アップすることに成功しています。なによりも素晴らしいのはこうしたことを行いながらも、室内スペースをまったく圧迫していないことにあります。電気自動車でバッテリー容量をアップするということは、燃料タンクを大きくするよりも簡単なことでないのです。

リーフe+に採用されたバッテリーは従来と同じレトルトパックのようなタイプです。最小単位の1セルは同じ形状ですが、組み合わせを変更したモジュールとすることで従来192セルだったものを288セルにアップ。WLTC航続距離では322kmであったものを458kmと40%以上の向上を果たしました。

バッテリーモジュールは若干大きくなりましたが、フロア下に張り出させることで、室内への干渉を防止しています。張り出し量は20mmになりますが、全高を5mアップすることで最低地上高の減少は15mmに抑えています。外観面での変更点はこの車高の変化とフロントリップスポイラーへのブルーのラインの追加、ホイールセンターキャップのブラック化、充電ポートへのe+マークの追加程度とほとんどわからないものです。

まだ正式発表前であったこともあり、試乗は千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われました。サーキット走行での性能チェックではなく、あくまでもクローズドコースということでこの場が選ばれました。

まず発進加速ですが、これは明らかにつよくなっています。リーフは電気自動車らしく、初期からの加速が強い特性ですが、e+はその感覚がさらに強くなっています。テスラ・モデルSのようなロケットスタートではありませんが、ある意味ファミリーカーであるリーフであることを考えればかなりビックリな加速力です。

コーナリングはノーマルリーフよりもしっかりしてスムーズな印象となっています。その第一の要因は重心が下がったことです。e+はノーマルに比べると180kg程度重くなっているのですが、その原因のほとんどが床下に積まれるバッテリーです。重心高でのダウンは10mmにとどまりますが、感覚的には車高を落としたクルマのようになっています。また、ストラットアッパー部にボールベアリングを採用したことで、動きにスムーズさを増しています。かなり気をつけないとわからないレベルですが、コーナリング中にステアリングを左右に動かすとその違いが伝わってきました。

パワーアップをしたためにステアリングを切った状態でアクセルを踏んでいくと、トルクステアが発生しやすくなっています。クリッピングからのフル加速ではこうした状況になりがちですが、一般道ではあまり気にならないでしょう。ただ、交差点でUターンをする際などはアクセル操作とともに、ステアリング保持もしっかりしておいたほうがよさそうです。

駆動系のパワーアップは行われたものの、ブレーキは従来モデルのままです。サーキットのように回生ブレーキを使わないシチュエーションではブレーキに対する負担も大きくなるため、ハードな走行を行っていた試乗車はブレーキから白煙を発していました。一般道ではこうしたことは起きないでしょうが、もう少しブレーキパフォーマンスをアップしてもいいかもしれません。

(文/諸星陽一・写真/前田恵介)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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