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ユーザーに対するコスト負担を軽減したスズキのクォータースポーツがしたたかな人気を誇っています。何と言っても税抜き価格で48万8000円と言う価格設定が大きなインパクト。実際に乗ってみれば多くの一般的ニーズを満足させ、ユーザーの期待を裏切らないパフォーマンスを発揮してくれるのですから、市場でジワジワとその評価が高まってくるのも納得です。今回はトリトンブルーメタリックのニューカラーに試乗しました。
スズキ・GSX250R……527,040円〜
このバイク、結構気になりませんか? フルフェアリングを装備したレーシーなスタイリング、250ccという排気量、そして何よりも 本体価格で50万円を切るリーズナブルなお値段とくれば、誰もが注目します。ネーミングも末尾にRが付けられているし、走り屋でも一目置く存在……かもしれません !?
中国生産の製品ですが街中でも多く目にすることができ、実際その人気ぶりは侮れません。今どきのニーズを着実に捉えた証と言えるのではないでしょうか。試乗車はMotoGPマシンをイメージさせるトリトンブルーメタリックNo.2を採用したECSTARカラーの新規投入モデル。アーバンアスリートをコンセプトに仕上げられたスタイリングと新しいカラーリングは、エキサイティングな雰囲気がさらに強調された印象を受けます。
早速跨ると全体的なバランスと雰囲気がとても親しみやすいです。車体のサイズ感、車両を扱う手応えとして感じられる重量感等が良い意味で平均的。大き過ぎず小さ過ぎず、軽くはないが重くもなく、何ともしっくりと馴染みやすいのが好印象です。
見た目はスーパースポーツ然としていますが跨がるとストリートスポーツとしての明確なわきまえがあり、前傾姿勢のきつくない快適なライディングポジションもあって、筆者の頭の中では多くの人への「おすすめ度」が上昇しました。
搭載エンジンは同FモデルやネイキッドのGSR250と基本的には共通。水冷4サイクル直列(並列)2気筒、気筒当たり2バルブのSOHC。ボア・ストロークが53.5×55.2mmという248ccが採用されています。お気付きの方もいるでしょうが、ちょっと懐かしさを覚えるメカニズムとロングストロークエンジンであることが見逃せません。24psの最高出力は8000rpm、220Nmの最大トルクは6500rpmで発揮され、同クラスライバルモデル達と比較するとポテンシャルを低い回転域で発揮できるのが特徴です。
つまりごく普通の実用域の中で、もてる性能を存分に発揮できる機会が多くあるという事です。余談ながらローラーロッカーアームや低張力ピストンリングの採用とシリンダー壁面加工精度や吸排気効率向上等でフリクションロスの低減化が図られ、低燃費性能の追求も訴求されています。
ストリートに良く馴染む気楽で優しい乗り味
走り始めると良い意味で穏やかな出力特性を直感します。クラッチミートする発進操作に始まり交通の流れに乗る加速操作も楽。シフトアップやギヤ・チョイスに要求されるシビアさが少なく、ゆったりした気分で快適に走れるのです。
回転計のレッドゾーンは1万500rpmからですが、そんなに回すシーンがイメージできないほど十分な高性能が発揮されます。そのストリートにマッチする合理的パフォーマンスが理解できるとロングストロークエンジンから発揮されるゆったりした乗り味が魅力的に思えてきます。
もっとも8000rpmも回せば吹け上がり速度が鈍くなり始める。それ以上も回りますが回す気になれなかったのも事実です。ちなみに市街地50㎞/hクルージング時のエンジン回転数はトップギヤで3500rpm。気になる震動もなくいたって快適に走り続けることができました。
操縦性も素直でサスペンション性能も車重とのバランスが取れていて、キチンと仕事してくれる感じ。唯一惜しいと思ったのはハンドル切れ角が34度と小さめなことです。最小回転半径は2.9mでギリギリ及第ではあるが、せめて35~36度の切れ角を確保してくれれば、より嬉しかったと思います。
それにしてもコスパの高さは大きな魅力。ずばりビギナーライダーにお薦めですが、ツーリングの足に気楽なバイクをお探しなら一度この穏やかな乗り味に触れてみると良いでしょう。
足つきチェック(ライダー身長170cm)
シート高は一般的レベルの790mm。ふくらはぎにちょうどステップの先端が当たるので、足の着地位置が若干外側に広がる感じ。ご覧の通り両踵は少し浮いてしまいますが、足つき性やバイクの支えやすさは特に問題ありません。下の写真からもわかる通り、右のステップは左よりも若干外に位置しています。
ディテール解説
ペタルタイプのシングルローターには2ピストン油圧ピンスライド式ブレーキキャリパーをマッチ。
右側に出されたショートアップマフラーはなかなかのボリューム感があります。装着タイヤはタイランド製です。
クリップオンのセパレートタイプですが、フロントフォークを突き出し、トップブリッジの上でマウントされたハンドル。ストリートスポーツとしてごく一般的なライディングポジションを提供してくれます。
白黒反転液晶画面を使用したメーターディスプレイ。右横に伸びるタコメーターのグラフは1ブロックが250rpm。時計や燃費計、各種警告灯にエンジン回転インジケーターも装備されています。
ハンドル左側のスイッチボックス。レイアウトは一般的。赤いボタンはハザードスイッチ。人差し指で扱う黄色いボタンはパッシングスイッチです。クラッチレバーホルダーは共用部品でバックミラー取り付け部が見えます。
レーサーレプリカモデルのような段付きセパレートシート。後席下にはETC機器等が収められる若干のスペースが空けられています。
シンプルなモノショック構造のリヤサスペンション。白いコイルスプリングが印象的です。
⚫️主要諸元
型式 2BK-DN11A
全長 / 全幅 / 全高 2,085 mm / 740 mm / 1,110 mm
軸間距離 / 最低地上高 1,430 mm / 160 mm
シート高 790 mm
装備重量 ※2 178 kg
燃料消費率 ※3 国土交通省届出値:定地燃費値 ※4 41.0 km/L(60 km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 ※5 32.5 km/L(クラス2、サブクラス2-2)1名乗車時
最小回転半径 2.9 m
エンジン型式 / 弁方式 J517・水冷・4サイクル・2気筒 / SOHC・2バルブ
総排気量 248 cm3
内径×行程 / 圧縮比 53.5 mm×55.2 mm / 11.5
最高出力 ※6 18 kW〈24 PS〉/ 8,000 rpm
最大トルク ※6 22 N・m〈2.2 kgf・m〉/6,500 rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式
潤滑方式 ウェットサンプ式
潤滑油容量 2.4 L
燃料タンク容量 15 L
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.416
2速 1.529
3速 1.181
4速 1.043
5速 0.909
6速 0.807
減速比(1次 / 2次) 3.238 / 3.285
フレーム形式 セミダブルクレードル
キャスター / トレール 25°35′/ 104 mm
ブレーキ形式(前 / 後) 油圧式シングルディスク / 油圧式シングルディスク
タイヤサイズ(前 / 後) 110/80-17M/C 57H / 140/70-17M/C 66H
舵取り角左右 34°
乗車定員 2名
排出ガス基準 平成28年二輪車排出ガス規制に対応
(文:近田 茂(CHIKATA Shigeru)/写真:山田俊輔(YAMADA Shunsuke)