日産自動車のカルロス・ゴーン氏が、同社の有価証券報告書に自らの役員報酬を約50億円過少記載した疑いや私的な目的での投資金支出、経費支出が有るとして、東京地検特捜部が11月19日、金融商品取引法違反の疑いで同氏と、同社代表取締役のグレッグ・ケリー氏を逮捕しました。
ゴーン氏の報酬は2016年度までは3年連続で10億円を超えていましたが、2017年度は7億3,500万円で、過去最高だった2016年度の10億9,800万円から3割以上減少していました。
経営危機に陥った日産を立て直した経営手腕で知られる同氏は、1999年に45歳で仏ルノーから日産の最高執行責任者(COO)として就任。主な経歴は以下となっています。
・1954年にレバノン人の両親の元、ブラジルのアマゾン川流域の街で生まれる
・2歳で両親の故郷レバノンに移住、高校まで過ごす
・仏パリの大学へ進学。6ヶ国語を操る
・1978年に24歳で仏のタイヤメーカー、ミシュランにン入社
・18年間で南米や北米事業のトップに就任するなど要職を歴任、コストカッターの異名を持つ
・1996年に仏ルノーがヘッドハンティング、同社の上席副社長に就任するや数年で黒字化に成功
・1999年に日産自動車の最高執行責任者(COO)就任、
・2000年に日産取締役社長に就任(46歳)
また、ゴーン氏の日産でのこれまでの功績は以下となっています。
・2000年4月の日産社長就任時、6,800億円の赤字状態だったが、部品調達コストを削減、
売れる地域(米国)で沢山販売するなど、翌年3月には 3,300億円の黒字にV字回復させる
・約2兆円の有利子負債を4年で完済
・2011年6月、三菱自動車工業と軽自動車事業に関わる合弁会社を設立
・2016年に三菱自動車工業を傘下に入れ会長職に就任
・赤字対策で2万人のリストラを断行。一方でメーカーとしてやるべき成長戦略
(米市場の強化、新車投入、デザイン改良など)を着実に実行
・2017年4月に日産の社長を退き、代表権のある会長に就任
一方、ゴーン氏の性格や能力面は……
・決断が早く、実行も早い
・努力家、勉強熱心、複雑な物をシンプルに説明する能力に長ける
そんな日産にとっては恩人と言えるゴーン氏ですが、同氏に集中していた強大な権力の弊害からか、今回の不正発覚までに時間がかかり過ぎているきらいが有り、本件が長きに渡って発覚しなかったのが非常に不可解。
2017年4月にゴーン氏に代わり、同社社長となった西川廣人社長や、1988年に北米日産に入社、2008年に執行役員となり、2015年に同社代表取締役になったグレッグ・ケリー氏を含め、社内での認識がどうなっていたのかなど、今後の更なる事件解明が待たれます。
(Avanti Yasunori・画像:NISSAN)