【週刊クルマのミライ】マツダとスバルのバルブスプリングに関するリコールは同じ原因なのか?

2018年11月、スバルとマツダが相次いで「バルブスプリング」に関するリコールを国土交通省に届出しました。あまりにタイミングが近かったため「同じサプライヤーで製造の問題があったのでは?」という邪推もあったようですが、リコールの内容を見ると、不具合の症状というのはまったく違います。

86/BRZが対象ということで注目を集めているスバルのバルブスプリングのリコールは、2012年1月から2013年9月に製造された車両が対象。

マツダの場合は最新モデルであるCX-8が含まれるなど2012年4月~2018年5月の期間に製造されたモデルが対象となっています。とはいえ両社とも2012年製造のクルマから対象となっているのは気になるといえそうです。

スバルがリコールとする理由は、最悪バルブスプリングが折損するというもので、要は強度不足といえますが、マツダの理由はバルブを閉じる力が弱い、つまりバルブスプリングのバネレートが足りていないというもの。いずれにしても設計の問題と考えられますが、それぞれ理由は異なるように思えます。

バルブが折損するというと、高回転まで使ったときに共振などをしてしまうバルブサージングという現象を想像してしまいがちですが、対象となっているクルマには86/BRZのようなスポーツカーだけでなく、インプレッサ系も含まれています。単純にレブリミット近辺の高回転を多用したことによるサージングとは思えません。もちろん、バルブスプリングの共振についてはメーカーとしても十分に考慮しているはずです。

なお、スバルの発表によればバルブ折損の原因は「過大な荷重」ということですからサージング由来での折損ではないと理解すべきかもしれません。

マツダがリコールとなった要因については、SKYACTIVエンジンの高効率を求める開発において攻めすぎたと予想されます。

今回、対象となっているのはディーゼルエンジンですのが、ガソリンエンジンのSKYACTIV-Gにおいて、バルブスプリングをはじめとする動弁系の設計を見直すことでメカニカルロスを半減したという話もありました。レシプロエンジンは特殊なエンジンを除いて、バルブはスプリングによって閉じた状態とされ、それを動かすカムシャフトはクランクシャフトの力で回し続けていますから、バルブ周りのロスを減らすのは燃費に効いてくる部分。

バルブスプリングを可能な限り柔らかくしたいというのはマツダに限らず、すべてのメーカーが狙っていることでしょう。

ちなみに、一般論としてバルブスプリングのバネレートを柔らかくするほどサージングは起きやすいとも言われますが、バネの共振に影響する固有振動数は質量とバネレートによって決まることが、その理由です。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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