新型メルセデス・ベンツAクラスは、AIを搭載し、ユーザーごとに適応する対応能力を備えるという対話型インフォテイメントシステム「MBUX」により、「話すクルマ」「対話(会話)できるクルマ」と表現できるモデルになっています。
従来でもドライバーやパッセンジャーがスマートスピーカーや、iPhoneのSiriのようにスマホに話しかけることで、ナビ機能(検索や目的地設定)、オーディオ操作、エアコン操作などが可能でした。
しかし、エンジン音や風切り音、ロードノイズなどのほか、周囲のクルマなどが発する騒音、街中であれば多様な音があふれていて、車載で音声認識機能(ボイスコントロール)を高精度で実現するのは難しいとされてきました。
各社の音声操作を試す中で、個人的にトップクラスの高精度だと感じたのがクラリオンの「インテリジェント・ボイス」対応ナビ。こちらは、Googleのローカル検索が可能で、クラリオンの音声認識技術、ヒューマン・コンピューター・インタラクション(HCI)の技術開発を担うイナゴによる技術により、自然な対話型での操作に加えて、認識精度も高いものがあります。
「MBUX」では、AIなどはNVIDIA(エヌビディア)、音声認識機能はニュアンス・コミュニケーションズ社のシステムが採用されています。
マイクは運転席と助手席頭上の天井に埋め込まれていて、実際に「MBUX」を試してみると、ユーザーが発した言葉を聞き取る精度が高く、比較的聞き間違えが少ないようです。
最初に「ハイ、メルセデス」と呼びかけると、10.25インチのディスプレイに「何を行いますか?」と表示(反応)。なお、助手席で操作をレクチャーしてくれたメルセデス・ベンツ日本の方と会話していると、「メルセデス」という言葉に車両側が反応することもあり、単に「メルセデス」と発話しても反応することも、しないこともありました。
「近くのラーメン屋」と発話すると、本来はラーメン屋のリストが表示されますが、私が試すと、ピンポイントで最も近いラーメン屋が1軒だけ検索することもありました。ほかにもハンズフリーで電話を掛けたり、「近くのコンビニ」「今日の天気は?」などに正確に対応してくれるほか、「寒い」と発話するとエアコンの温度設定を変えたり、スポット名を発話すると、目的地設定もしてくれたりします。
車載用に関わらず、音声操作を使って最も困難なのは、目的地の探索を住所で一挙に発話した場合。短い住所なら先述したクラリオン製ナビも一発でたどり着けるものの、「郡や大字」などが付く長い住所だと難しいようで、「MBUX」でも苦労していました。
それでも「MBUX」は、ユーザーの発話に対する聞き取り能力の高さはトップクラスにあることは間違いなく、ユーザーが慣れれば、AIにより車載側も慣れてくれるはずなので、使えば使うほど手放せない存在になりそうです。
(文/写真 塚田勝弘)