続いて大津選手に乗ってもらう。実は大津選手も市販車のNSXでサーキットを走るのは初めて。しかし2~3周もしないうちに、外から眺めていても解るくらいキレの良い走りを見せてくれた。
もてぎは基本、コーナー、直線、コーナーと繰り返すようなレイアウト。こうした所ではまずブレーキングからターンインでクルマの向きをできるだけ速く変えて、真っ直ぐトラクションをかけてアクセルを踏んでいくことが求められる。
難しいのは1~2コーナーやS字といったコーナー。ここではオーバーステアへの対処が求められる。
「このクルマの特性で1~2コーナーの間でオーバーステアが出やすいので、それをなるべく出さないように、クルマを安定させるようなイメージで走ります。S字は切り返しの部分で、すごくオーバーステアが出やすいんですが、我慢しすぎるとアンダーステアが出てしまうので、その間できれいにラインをトレースできるように走らせます」。
NSXのオーバーステアは、我々アマチュアにとっては挙動が速く、対処が難しい。速さだけでなく安定した走りのためにもここがポイントになるが、そこではNSXの特徴であるフロントの2基の電気モーターによるトルクベクタリングが難しさに繋がっている部分もあるようだ。
4輪が限界ギリギリで旋回している時に「じわり」とアクセルを入れていくと普通のクルマならアンダーステア気味に膨らむが、NSXはここでフロントがインに切れ込み、逆にオーバーステアに繋がりやすいという。こうした次元の話は、プロドライバーならではだ。
一方、高く評価していたのがブレーキのコントロール性である。特に難所は最終のビクトリーコーナー。
「ここは緩くブレーキングしながら入っていくのでクルマが不安定になりやすいんですが、ブレーキの踏み方、抜き方でクルマの姿勢をコントロールするのがやりやすいです」。
実はパッドが終わりかけで大津選手には悪いことをしてしまったのだが、走りはやはりさすがだった。当たり前だが、プロの技である。
残念ながらもてぎ1周を語るにはスペースが足りないが、大津選手のドライビングについてはGENROQ Webの動画も参照いただければと思う。NSX、難しいけれど奥深く、楽しめるクルマだということ、その走りで感じていただけるはずだ。
さて、ホンダは先日NSXの2019年モデルを発表した。シャシーのセッティングを大幅に変更し、タイヤも新設計としてコントロール性を高め、ラップタイムも鈴鹿で2秒速くなったという。その走りがどのように進化したのか、遠からず是非確かめてみたいところである。
【INFORMATION】
この企画の動画をYouTube「GENROQ Web Channel」にて公開中。また、2018年10月下旬より『GENROQ Web』をスタート致します。ハイエンドカーの最新情報やニュース、試乗記事も動画と併せてご覧頂ける予定です。
『GENROQ Web』URL=https://genroq.jp/
REPORT 島下泰久(Yasuhisa Shimashita)
PHOTO 篠原晃一(Koichi Shinohara)
COOPERATION/本田技研工業 Tel 0120-112010 http://www.honda.co.jp