こうした判断はけっして天の邪鬼なわけではありません。明確なメリットがあります。
ハイブリッドの4WDにおいて前後の駆動モーターを独立させることはプロペラシャフトをなくすことができ、パッケージや軽量化の面でメリットがあるのは事実です。また、後輪モーターの出力を上げることで、前後の駆動力配分を50:50に近づけることもできますし、四輪を合計した出力では十分以上の駆動力を得ることも可能です。さらに前後の駆動力配分にしてもモーター出力をコントロールするわけですから、機械的につながっている方式に比べて、緻密に制御できるという利点もあります。
それでもプロペラシャフトと前後駆動力配分機構(新型CR-Vの場合は電動オイルポンプを使った仕組み)を組み合わせたシステムでは制御の可能性が全然違うといいます。
仮に前後の駆動モーターを同じ出力とした電動4WDとした場合フルパワーを発揮できるのは前後駆動力配分が50:50の場合に限られます。プロペラシャフトでつながっている4WDであれば前後の駆動力配分を70:30にしたり、逆に30:70にすることも可能ですが、独立モーターではどちらかの出力を絞るしかないので、50:30であったり、30:50であったりといった風になってしまいます。前後の合計が100にならないのです。
スリッピーな道での駆動力配分であればフルパワーを出す必要はないともいえますが、前後独立モーターの4WDにおいて駆動力制御を緻密に行なえば行なうほど車両として持っているパワーをフルに発揮できる機会が減ってしまうというジレンマがあります。
その点おいて、新型CR-Vが採用したようなプロペラシャフトによって前後を機械的につないだ4WDシステムは、ハイブリッドのパフォーマンスをフルに引き出せる領域が広くなることが期待できる、意味のあるシステムだといえるのです。
けっしてコストダウンのためではなく、CR-Vのハイブリッドとしてベストの選択をしたのが、「スポーツハイブリッドi-MMD」として初となる4WDシステムというわけです。
(山本晋也)