前回は私の身の上話にお付き合いいただきありがとうございました!
そして、さらに引き続き……になってしまうのですが、今回は私とロードスターの出会いについてお話をしたいと思います。
実は私は自動車雑誌の編集に携わるまで、スポーツカーにはまったく触れたことがありませんでした。まわりの誰かが持っていたとか、助手席に座らせてもらったとか、そんな経験がないどころか、本当に目の前で見たことさえなかったのです。出身が雪国なので、クルマといえば当然「ヨンク」。そして「ニク」といえば、前輪駆動しかないと思っていたほど。それがこの業界に入るようになって、その世界は一気に広がりました。そして、そのきっかけをくれたのが、ロードスターだったのです。
初めて乗ったのは、2代目のいわゆる「NB」。記事を書くため広報車を借りて、教習所以来のおぼつかない手つきでマニュアルを操作しながら、走り出したあの日。初めて「屋根の開く」クルマに乗って、車内に吹き込んでくる風をいっぱいに吸い込みました。
夏のはじまりを感じる緑が輝くにおい、そして熱い空気が私を満たしていく。ロードスターに乗っているときには、不思議とクルマの存在を忘れるような感覚になりました。まわりの空気のなかに、自分だけがぽっかりと浮かんでいるような。心地よい風や香り、鳥の声……自然の空気に包まれる、誰にも邪魔されない自分だけの空間。こんな風に感じるクルマは、私にとって後にも先にもロードスターだけだろうという直感がありました。
すぐに虜になってしまった私はロードスターを買おう!と決意したのですが、そのときにはすでに新型「ND」の噂が。それが出るまで……と我慢に我慢を重ね、NDが登場して試乗した直後、すぐに購入。乗った瞬間に「NB」と同じように、いえ、それ以上に自分にぴったり合うクルマだと分かったのです。
自分がスポーツカーに乗る日が来るとは、数年前にはまったく想像もしていませんでした。ロードスターは大きく扉を開いて、私のことを待っていてくれていたような気がします。単なる「スポーツカー」としてではなく、これから生活をともにする相棒として。毎日一緒にいればいるほど、何かを与えてくれる。そんなロードスターのことを、これからもっともっと知るために、いろんなことにチャレンジしたいと思っています。
(伊藤 梓)