【新型クラウン試乗】ハンドリングと乗り心地は欧州車に並ぶレベルとなったか? 2.0L RS Advanceをチェック

① 安心感の高い直進性

一般道であっても高速道路であっても、そっとハンドルに手を添えているだけで、滑らかに、クルマは真っすぐに突き進みます。タイヤ、サスペンション、空力特性など、クルマとしての基本ポテンシャルが確保できていないと、このような「自然な直進性の良さ」は生まれません。

素の直進性の良さに加え、さらにステアリングアシスト機能によって、レーン中央を走行する様、やんわりとサポートをしてくれるので、非常に安心ができます。多少、気を抜いて運転していたとしても、クルマ自身が真っすぐに進んでくれるので、非常に快適に感じます。

② 「滑らかに曲がる」自然なハンドリング

コーナーやレーンチェンジの様なシーンにおいて、クラウンRSはステアリング操作に対して忠実に反応します。「驚くほどの過敏な応答性」ではありませんが、それがまた落ち着きのある動きで感触がとても良いです。

「BMW5シリーズ、メルセデス・ベンツEクラスをベンチマークにして開発した」というトヨタの発表の通り、まさに欧州車の様な、俊敏さと落ち着きを両立した挙動は、もはや同等以上に感じました。

③ 運転席からの視界が優れている

最新の「TNGA」技術によって車両重心は低く、ドライバーの着座位置も低くなり、運転時の安定感が一段と増しました。ドライバー席から見ると、Aピラーが細くなるように見せているので視界に入りにくく、また死角も少なく、安全確認がとてもやりやすいです。

決して小柄とは言えないクラウンのボディですが、視界が良いだけにで、どなたでも運転しやすいと感じるはずです。

④ 乗り心地の良さ

225/45R18サイズのブリヂストンREGNO GR001を装着しており、路面からの突き上げは少なく感じます。低扁平のタイヤを履いていると、突起を超えた時に「どたばた」とばね下が暴れることがありますが、そういった印象はありませんでした。

乗り心地の印象は欧州車に近く、ふわふわと振動が残る乗り心地ではなく、ダンピングが効いたサスペンションの印象です。先代までのクラウン・ロイヤルのイメージで乗り込むと、「やや硬めに締め上げている」と感じます。

⑤ 走行モード変更で乗り味は激変する

RSには標準でAVS(電子制御ダンパー)が付きます。走行モードは、ECO、COMFORT、NORMAL、SPORT、SPORT+と5段階も選べます。モードを変更すれば、足のセッティングが変わったことがはっきりと分かります。

COMFORTは、路面のうねりを超えた時に上下のフワついた動きを許しますが、ソフトに路面の凹凸をいなしていきます。旧来のクラウン・ロイヤルの方向に近いセッティングに感じます。

また、SPORT+にすると、路面の突起を明確に拾い、コツコツとした突き上げを感じるようになりますが、路面のインフォメーションがはっきりと分かる様になるので、安心感が高まります。

その中間がNORMALであり、まさに「丁度良い乗り心地」になります。RSの様なスポーティな仕様を選ぶ人であっても、普段の乗り心地は良いに越したことはありませんので、滑らかなCOMFORTで走行できるのは、このAVSのありがたみです。

⑥ パワーに優れた元気なエンジン

2.0Lターボエンジンを積んだこのRSモデル、加速性能に関しては「踏めば速い」です。3000回転を超えると視界がゆがむような加速感を感じます。

車両設定が「NORMAL」モードや「COMFORT」であれば、ジェントルな落ち着いた運転になりますが、「SPORT+」モードにすれば、アクセルにダイレクトに反応するようになります。ちなみにカタログ燃費(WLTCモード 燃料消費率)は、ターボ:12.4km/Lです。3.5Lハイブリッド:16.0km/L、2.5Lハイブリッド:20.0km/Lに比べると、最も低い値です。

新型クラウンは、BMW5シリーズ、メルセデス・ベンツEクラスをベンチマークして開発してきたそうです。現時点の販売は絶好調ですが、今後は同価格帯の欧州車がもつブランドバリューに勝てるかという点が、これからの売れ行きを左右するポイントになると思われます。

新型クラウンの「価値」が、お客様に伝わり、そして共感を得られるか、今後がとても楽しみです。

(文/写真:吉川 賢一)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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