【TRDクラウン forRS 試乗】クラウンの素質のよさを生かしたファインチューン。パフォーマンスダンパーが乗り味を上質にする

6月に登場した15代目のクラウンはユーザーの若返りを大きく意識したモデルとなっています。そのため、従来使われてきたロイヤルサルーンなどのグレード名もなくなり、マジェスタも消滅しました。それだけに、スポーティさはとても大切な味付けとなります。

だからといって、ガチガチのハンドリングではクラウンという上級セダンを買った人の気持ちを満足させることはできないでしょう。そこでTRDの取り組みは、まずはエアロパーツによる空力チューンとパフォーマンスダンパーによるボディチューン、さらにタイヤ&ホイールの変更を行ないました。

エアロパーツは前後サイドのスポイラーに加えて、トランクスポイラーが装着されました。フロントのスポイラーはワークチューンらしく、衝突時のポップアップボンネットに対応し、安全性を損なうことはない仕様となっています。

パフォーマンスダンパーは前後のバンパー近くに左右方向に装着。横方向の余計な動きを減衰しています。ホイールは剛性の高い鍛造の19インチを採用。タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4Sで、サイズは235/40ZR19となります。ドアの取り付け剛性をアップするドアスタビライザーも装着されました。

新型クラウンはもともと素直なハンドリング性能を持ったモデルで、スポーティな走りが魅力です。ただ、ユーザーの若返りを狙っていると言いながらも、従来のユーザー層を捨てきれない部分があり、どうしてもゆるい部分が目立つこともありました。それがこのTRDパーツを装着することによって、ゆるい部分がピシッと引き締められ、シャープなフィーリングが増しています。

とくにミシュランのパイロットスポーツ4Sの高性能でありながら、しなやかな乗り心地はクラウンの車格に合っていて、走りを決定する大きなポイントとなっています。言ってみれば、このタイヤをはきこなすためのパーツが鍛造ホイールであり、パフォーマンスダンパーであるのです。

まずは、これらのパーツで基本的な走りの質をアップしたTRDのクラウン。これでも十分に魅力的ですが、次に乗るときは足まわりなども含めた、フルコンプリートモデルとなっていることでしょう。それがどういう味付けなのか? には興味が膨らみっぱなしです。

(文/諸星陽一 写真/小林和久、ウナ丼)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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