NAエンジンでは高回転まで使うこともあるN-VANですが、トルクフルなターボエンジンは日常的な用途であれば2500回転以下で事足りるといった実力を持っています。さらに商用バンとしての耐久設計を受けたというCVTは非常にスムース。最大積載時にもしっかりとボディを支えるサスペンションは、空荷だからといってリヤの跳ねが気になるようなこともありません。
多くの部分でN-BOXに対して、強度アップなどを狙って設計変更されているといいますし、タイヤもライトトラック用の12インチとなっていますが、街乗りの範囲では、ほぼN-BOXと変わらない乗り味といえそうです。振動や騒音も乗用車に迫るレベルですからドライバーの疲労も大幅に軽減されることでしょう。
また、後席や助手席はダイブダウンして格納することを前提とした設計ですが、運転席だけはドライバーのことを考え、しっかりとサポートする仕様となっているのもうれしいポイントではないでしょうか。
唯一、気になるのはハンドリングのキレ。車線変更などでは、N-BOXに対して少し応答遅れがあるように感じました。そのあたりを開発エンジニア氏に尋ねると、「全高が高くなっていることに合わせて(ロールオーバーしないように)ステアリングのギア比をスローにしている(ハンドル操作に対してタイヤの切れ角を少なくしている)ために、そう感じるのではないか」ということです。
言われてみれば、乗り心地がよいわりに、全高が高いことに由来する姿勢の乱れなどを感じることもありませんでした。そうしたセッティングにおける工夫もN-VANに乗用車感覚の安心感を生んでいる理由なのでしょう。休日にはレジャービークルとして使え、日常ユースにも違和感なく使えるパーソナルカーとして、新しい価値を生み出すモデルといえそうです。
■ホンダN-VAN +STYLE FUNターボ Honda SENSING(FF)
車両型式:HBD-JJ1
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高:1945mm
ホイールベース:2520mm
車両重量:970kg
乗車定員:4名
エンジン型式:S07B
エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:658cc
最高出力:47kW(64PS)/6000rpm
最大トルク:104Nm(10.6kg-m)/2600rpm
変速装置:CVT
燃料消費率:23.6km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:145/80R12
メーカー希望小売価格(税込):1,668,600円
(写真・文 山本晋也)