第一目標である「ル・マン24時間レース参戦」を達成するも、最終目標である「総合優勝」を掴み取るのはそう簡単ではありませんでした。
ライバルのポルシェ、アウディに完敗した2015年、今でも脳裏に焼き付いて離れない2016年ラスト5分の悲劇といった苦難からトヨタ式「カイゼン」を繰り返し、2018年第86回ル・マン24時間レースでついに悲願の「総合優勝」を果たしたのです。
村田さんがル・マンのパドックを歩いているとき、観戦に来ていた現地の熟年男性に以下のように話しかけられたそうです。
「ハイブリッドというのは面白い使い方をするな。それはよくわかった。ところで、いつになったらオレが買えるクルマになって出てくるんだ? いまそこのピットに入っているクルマにオレは乗れないし買うことはできない。だから、ハイブリッドを動力性能に振ったクルマを出してくれ。買えるか買えないかはわからないけど、オレ待っているから」
この言葉を受け「ル・マンで勝ちたいという気持ちはしょせん自己満足」とハッとしたという村田さん。
「レーシングハイブリッドの技術開発を進めたらトヨタ自動車のクルマは良くなる。それはトヨタ自動車にとってうれしいこと。レース活動を続けることで人が育つ。それも、トヨタ自動車にとってうれしいこと。じゃあ、お客さんはどうなんだと。その目線が足りていなかった。お客さんにとっては、ル・マンで走っているクルマが買えて、乗って、自分が楽しくなって初めて完結する」(村田久武)
レースで走るクルマは「別世界」というイメージでしたが、トヨタがル・マンで戦い続けているハイブリッドマシンはこれからのクルマ社会に役立つ技術がたくさんつまっている、だからル・マンは見ていてこんなに胸が熱くなるんだと私もハッと気付かされました。
「トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日」を読んでトヨタのル・マン参戦の歴史、何のためにル・マンに挑戦し続けているのかが分かったと同時に、トヨタを引っ張ってきた木下さんと村田さんの人柄も良く分かり、まるでドキュメンタリー映画を見ているようでした(映画化されないかな……)。
また、苦しくて辛い経験を経て目標を達成した村田さんの言葉は、これからの人生で心が折れそうな時に絶対に思い出そう、もう一度この本を読もうと思わせてくれました。
トヨタの挑戦、ル・マン制覇の舞台裏を知りたい方はもちろん、仕事や将来に悩んでいる方にも是非読んでもらいたい一冊です。読みだしたら面白くて、本をめくる手が止まらなくなるので要注意!
(yuri)
【関連リンク】
三栄書房オンラインショップ「トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日」
http://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=10315