3年振りに中国へ行ったら「マツダやスバルは遠くない時期に撤退を余儀なくされるかもしれませんね!」と痛感した。なぜマツダとスバルなのか? ご存じの通りカシオはデジカメから撤退すると発表している。カメラといえば日本の得意分野だったのに、全く違う”道具”として作られたスマートフォンに駆逐されてしまったのである。
マツダもスバルも、北京モーターショーの展示を見たら、完全に時代遅れ。スマートフォンでいかに美しい写真を撮れるようにしようか技術を磨いている中、未だ銀塩カメラで勝負しようとしているのだった。もちろんマツダもスバルも現地駐在員は本社に対し的確な情報を送っているだろうけれど、無視しているという。
太平洋戦争で戦場から情報を送っても、すべて「気合い不足だ。頑張れ!」と却下された状況に似ている。マツダやスバルの経営陣だけでなく、多くの日本人は「中国が遅れている」という意識を強く持っていると思う。確かにエンジン技術についていえば日本の方が上。されど新しい分野である電動化技術は、すでに遅れを取ってしまった。
例えば電池。中国は海外からたくさんの技術者やノウハウを集めることにより(日産の電池部門も中国の企業が買った)技術が急速に進化。現在世界で販売されているリチウムイオン電池のシェアなど、中国企業の躍進により統計すら全く追いつかないほど変化している。あっという間に50%を超え、今や70%超えとも言われるほど。
押っ取り刀でマツダやスバルが電気自動車に参入しようとしても、中国で売ろうとしたら現地生産しなければならない。当然ながら電池は中国で調達することになるし、モーターや制御系に代表される電動化部品だって中国で進化&コストダウンしていく。車体技術は、日米欧の自動車メーカーが全て工場作ってノウハウを伝えてしまっている。
それ以外のメーカーは安泰かとなれば、そんなことない。マツダやスバルより少し状況良いだけ。トヨタといえども安心出来ないと思うべきだ。驚くことに2017年の中国の自動車販売台数はアメリカの1723万台に対し2930万台(日本は524万台)。数年すればアメリカの2倍という市場へ育つ。今後さらに伸びが続くことだろう。
我が国もこの伸びに乗っていけるかとなれば、難しいと言う関係者は多い。今まで日米欧の技術習得のため外資参入を歓迎していた中国ながら、ここにきて「先端技術以外は歓迎しない」という流れになってきた。トヨタでいえば『第一汽車』と『広州汽車』というパートナー企業が新型車を独自開発出来る様になっている。
当初、日仏独の技術を取り入れた新幹線も今や全て自前開発に切り換えただけでなく、海外進出まで始めた。中国の新幹線、日仏独の長所を集め、性能も線路建設技術も世界一のコストパフォーマンスを持つ。中国の本当の怖さは、安くて優秀な電気自動車を海外に輸出されること。携帯端末と同じことになったら、日本の基幹産業を失う。
もちろん日本の自動車メーカーに体力が残っている時点で対応すれば、まだまだ打つ手はある。個性や技術力やアピールポイントを磨き込み、存在感&ブランドイメージ、日本人が強みとしている「丁寧さ」など確立出来れば戦っていけるだろう。
(国沢 光宏)