奇才・マッド杉山の「MR2最高速スペシャルマシン」って何だ?・その1【OPTION 1985年2月号より】

富士スピードウェイ近くにガレージを構えていた「マッドハウス」。主はボディ製作の奇才、杉山哲さん(※天才の由良拓也さん、奇才の杉山哲さんとよく言われています)。

F3000やGCをはじめとしたレーシングカーから、K4-GPの縮尺がちょっとおかしなマシンとか、ナンチャッテ車とか……。とにかくアイデアが面白いクルマたちをたくさん生み出した奇才です。残念ながら2013年、闘病の末に亡くなられましたが、OPTの誌面にはマッド杉山さんのアイデア溢れるクルマがたくさん登場しています。前回までご紹介していた「OPTスーパーMR2」のエアロ製作もその1台です。

今回プレイバックするこのマシンも杉山さんの作であり、1985年の第3回東京エキサイティングカーショー出展マシンです。では、その「奇才」ぶりを製作途中からプレイバックしてみましょう!

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MR2を280km/h狙いのエアロカーにしたら、ベンツC111になった!
マッドMR2ラングヘック

ガレージが開いた瞬間、「アッ!」と叫んでしまった。話は聞いていたが、こんなにすごいとは思わなかったのだ。まさしく、レコードカーだ。

このマッドMR2ラングヘック。「ラングヘック(LANGHECK ※ドイツ語で長い尾という意味)」とはその名のとおりロングテール仕様、マッド杉山の野心作だ。

製作にあたっては「ランナバウトのMR2をどこまで本物のスポーツカーに昇華できるか。サイズ的にも幅、長さはMR2と同じにして、エンジンは非力だから3S-G+ターボ。むろん、前作のヴィンミューレが中途半端に終わったので、今度は記録を狙う!」つまり、最高速スペシャルである。

「しかし、ウチはエンジン屋でなくボディ屋だから、エアロダイナミクスで追求したい。これまではすべてエンジンパワー重視ばかりだったが、200km/h以上の世界はパワーより空力だと思う」、その回答がこれなのだ。

MR2ベースで空力を追求していったら、まさしくベンツC111に似てくるのだ。基本的には全長も伸ばさないが、最高速用にだけロングテールを採用する。

しかし、このマシンのポイントは全高。フロントウインドウを傾斜させ、ルーフで100mm低くしている。全高はなんと1069mmという低さだ。

次が最高速用に、高速安定性をサスペンション・ボデイ剛性で補う。モノコックはサイドパネルで補強するが、そのためドライバーが乗降しにくいので、ドアはガルウイング式になった。

「CD値は0.30以下だと思うが、それより前面投影面積が小さいので、実質的には凄いエアロマシンだよ」

さらに驚異的なのは、ボディにカーボンファイバーやハニカムの最新素材を使用する点。単なるショーカーや実験車ではなく、マッドハウスの集大成にしたいという考え方なのだ。

エンジンの3S-Gはカシマ・エンジニアリングでチューンされる。マーレー製ピストンを使うので2Lをやや超す排気量だが、これにKKKのK27タービンとメカニカルインダクションで350psは楽に狙えるチューンだ。

目標280km/h! 1.5L・MR2(そう、このMR2は1.5Lがベース)でOPTION最高速レギュレーションのAクラスで、前人未到の記録をマークするという。

カスタムカーといってもこんな実践的なマシンが登場する時代になったのだ。まさにエキサイティングマシンの出現である。

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途中に出てくる「ベンツC111」がコレです(OPTION1982年7月号で紹介)。確かに、記録を狙いに行くと姿が似てきます。

しかしこのMR2…この号の写真だと、製作途中過ぎてなんだかよく分からないですよね(汗)。ということで、次回その2では、第3回エキサイティングカーショーに登場したマッドMR2ラングヘックをプレイバックします!

[OPTION 1985年2月号より]

(Play Back The OPTION by 永光やすの)

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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