── 女性仕様では20代を広く意識したものが多いですが、あえて20代後半や30代を想定したのはなぜでしょう?
「発売以来ずっと販売好調なアクアですが、この層には少し取りこぼしがあるんですね。そこで開発当初に出されたキャッチフレーズが「私だけの特別なアクア」で、そこから今回のコンセプトにたどり着いたわけです」
── 30代前後の女性はアクアを買ってくれませんか?
「20代後半になって仕事も落ち着き、収入や生活が安定した「大人の女性」がコンパクトカーを選ぶとなると、たとえばVWのポロなど欧州車などに向かってしまう。実は、アクア以外のトヨタ車を見てもそこがカバーできていないんですね」
── そこで大人の女性のファッションを追求したわけですが、エクステリアでは「バイカラー」がテーマです。これがいまのトレンドですか?
「落ち着いた中にコントラストを効かせた組み合わせで、一時の流行でなく長くつき合えるスタイル。柄モノや艶感のあるものでなく、自然体で自分らしさを出すテイストです。メインはスーパーレッドとブラックマイカの組み合わせとし、ベース車で人気のホワイトとブルーを加えました。」
── たしかに、レッドとブラックマイカの対比はこの世代の嗜好を感じますね。インテリアでは、シートをファブリックではなく合皮としましたね
「エクステリア同様、大人の落ち着いたスタイルを考えるとレザーの方が合っている。キャメル色も当初からの発想で、そこにターコイズブルーの差し色を入れています。パーフォレーションでは、穴の径を変えたのもこだわりですね」
── なるほど。さて、女性向け仕様のクルマを開発するにあたって、実際に女性からはどのような声が届いていますか?
「今回は商品部の女性スタッフから意見を集めたのですが、やっぱり単にカワイイ色を使うのは違うと。女性でもカッコよくて上質なものを望んでいるという声です。機能面ではシートヒーターの要望が多いことや、中にはネイルを付けても操作しやすいスイッチといった声もあります」
── たとえばステアリングの位置やシートの高さなど、より基本機能の面で女性ならではの要望はありませんか?
「女性はステアリングに体を近づけて運転することが多いですが、これはキャビン全体に対して前のめりでカッコ悪く見える。そういう、外からの視線を意識することが多いそうです。このあたりに、もっとたくさんのヒントがあるかもしれませんね」
ピンクのボディカラーやブランドのロゴなど、近年ようやく男性目線の画一的な「女性仕様」が減ってきました。今回のアクア「Rirvie」も大人のシックなテイストを目指し、ターゲットのリアルな声を反映しています。自動運転などの先進技術も含め、今後はより具体的な性差に踏み込んだ、文字通りの「女性仕様」があり得るかもしれません。
[語る人]
株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
モデリスタ本部
商品部 企画・開発グループ主任 村田啓一(文中写真左)
デザイン部 デザイングループ
グループマネージャー 森大樹(文中写真右)
(インタビュー・すぎもと たかよし)
【関連リンク】
アクア“Rirvie”(トヨタ自動車WEBサイト)
https://toyota.jp/aqua/customize/rirvie/