【試乗】アウディQ7で雪道を走って感じた二面性。これがクワトロの楽しさだ

しかし、さすがはアウディ!と思わせたのはそこから先です。走行モードを「ダイナミック」にしてアクセルを踏み込み気味にして雪道を走ると、状況によってはテールスライドを許容して『楽しむ走り』が可能。
とはいえ、スタビリティコントロールをオフにしない限りはドライバーの操作と車体の挙動を検知し、「これ以上は危険」とクルマが判断するとしっかりと動きを安定させてくれる制御になっています。その味付けが絶妙で、危なくはない範囲で雪道を楽しめるのがワクワクドキドキですね。

そこから先、もしも腕に覚えがあればスタビリティコントロールをオフにするとアクセルの踏み込み方で車体を自由自在に操れます。これがエンジンを縦置きで搭載するクワトロAWDの楽しさの真骨頂といっていいでしょう。大きく角度をつけてのドリフトを楽しみ、しかも大きなアングルをつけてもよほどのことがない限りスピンしないからまるで「スピンしないFR車」のような感覚。スポーツカーのようにアグレッシブな走りを堪能できるのが素晴らしいです(でも公道ではやらないようにね)。
重量級のSUVであるQ7が、重さを感じさせずまるで水を得た魚のように生き生きと走るように味付けられているのはさすがですね。

いっぽう、安全確実に走りたいのであれば走行モードを「オールロード」にしておけば大丈夫。ダイナミックのように楽しむハンドリング特性や介入遅めのスタビリティコントロールとはがらりと切り替わり、タイヤのグリップを守って着実な走りをするから安心です(スタビリティコントロールの介入度合いは走行モードにより変化する)。

また積雪があまりに多い場合は、「リフト/オフロード」のモードを選んでおけば車体を上げて車体との干渉を防ぎ、制御も変わってトラクションが高まるので心強い。これは、オンロードだけを重視した一般的な4WDにはない強みですね。

というわけで、雪道で走ったアウディQ7はどうだったか? 走破性の高いモードにしておくと超絶安全安心。車高を高くできるのも深い雪道に行くには心強い。いっぽうでドライバーがその気になれば、まるでFRのようにバンバンドリフトして遊べる。そんな2面性を持ったSUVでした。

「学級委員長的な真面目さを持ちつつ遊ぶ時には思い切りはじける友達」。そんな感じでしょうかね、雪道でのQ7は(笑)

そうそう、雪道に行くとボディが汚れます。でもアウディQ7はドア開口部下のサイドシルが閉じたドアに覆われる形状となっているので、乗り降りの際にズボンやスカートの裾が汚れないように工夫されているのも、細かいことだけど「お主わかっているな」でした。

(文:工藤貴宏/写真小林 和久)

   

この記事の著者

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工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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