2018年2月15日にF1速報別冊「F1メカニズム最前線2018」が発売されました。
F1速報といえばレース結果やグランプリの様子、ドライバーインタビューなど様々なコンテンツが掲載されていますが、今号は最新F1マシンのテクノロジーを解き明かす、F1メカニズム特集。なので、ドライバーの写真は一切ありません(あってもヘルメット越し)。
ドライバー好きとしては少し手に取りにくいなぁと思っていたのですが、読んでみたら面白くてページが進む進む! そんな「F1メカニズム最前線2018」の見所を、早速見ていきましょう!!
■ホンダF1パワーユニット3年間の進化とこれから
今号の一番の見所であろう「ホンダF1パワーユニット3年間の進化とこれから」。こちらではホンダF1パワーユニットのスペック3.8までの進化、2017年シーズンの戦いと成長について書かれているのですが、その中からHRD SakuraでF1のパワーユニットの開発を務める角田哲史さんのインタビューを少しだけ紹介します。
マクラーレンは「サイズゼロ」のコンセプトを掲げて2015年シーズンに投入するMP4-30の設計に着手。パートナーシップを組んだホンダはそのコンセプトを受け入れてRA615Hを設計しましたが、コンパクトに設計することを重視するあまり、性能面で妥協を強いられることになってしまいました。
角田さんがF1の開発部隊に加わったのは15年9月。RA615Hの設計にはタッチしていなく、初めてその姿を見たときは「これでいいの?」と思ったのだそうです。
「ターボチャージャーがVバンクの中にあることで、吸気系も無理なレイアウトになっていました。我々としてはフレッシュな頭でスタートを切ったわけですが、課題が分からず、信頼性もパフォーマンスの面でも壁を越えられない状況でした」
現行レギュレーションが導入されたのは14年。ホンダの参戦は15年なので表面上は1年後れでの参戦に見えますが、実際には何年も遅れていたのだそうです。
「一度参戦をやめてしまうと、すべてリセットされてしまい、業界では当たり前のことに気づかないのです。開発を進めるにつれて、『そういうことか』と気づくような状況です。例えば、MGU-Kの駆動系がそうです。我々はものすごく苦労したのですが、継続して参戦しているコンストラクターは(09年に導入された)KERSの開発を通じてすでに経験しているので、課題はとっくにクリアしていたはずです」
RA615H(2015年)、RA616H(2016年)、RA617H(2017年)と課題をクリアしながら進化してきたホンダF1パワーユニット。しかし17年のRA617Hにも課題をいくつか抱えており、そのひとつがMGU-Kにまつわる駆動系だったのだそうです。
「15年、16年はたまたま顕在化しなかっただけなのかもしれませんが、パワーユニットに実車用のギヤボックスを付けると、共振系が変わり負荷が変化します。パワーユニット単体でベンチテストをし、ある程度見通しを立てて実戦に持ち込んだのですが、サーキットに行ったら不具合が出ました」
最新のギヤボックスは、開幕前に行う実走テスト直前にならないと手に入らないのが実状だそうで、角田さんは「リアルなギヤボックスを付けた状態でテストできなかったのは反省点」と話しています。そして、その反省点を18年シーズンに生かす、と頼もしい言葉も聞かせてくれました。
「チームが変わってギヤボックスの構造が変わるので、かなり神経質に評価しています。トロロッソのギヤボックスは大きく変化しないということなので、17年のものを借りて早い段階からテストしています」