国産スポーツモデルが数多く誕生した1980年代、尖ったメーカーはヨーロッパ名門ブランドとコラボしてスペシャル車両を生み出すに至っていました。そんな日欧コラボ・チューンド車を紹介する本企画、第6回は番外編として90年代に生まれた『トヨタ ハリアーザガート』です。
今回紹介するのはトヨタモデリスタインターナショナルがプロデュースしてコンプリート販売された『トヨタ・ハリアー ザガート』です。これは初代ハリアーをベースにイタリアのカロッツェリア・ザガート(SZデザイン社)が外装を手がけたモデルでした。
ザガートとは1923年誕生の自動車工房『ウーゴ・ザガート』を興した同名の人物のこと。アルファロメオやランチア、フェラーリなどのエクステリアを多く生み出した名門です。
そのザガート=SZデザイン社が担当した内容は非常に範囲が広いものでした。前後フルバンパーやリヤスポイラーなどは当然として、インパクトが大きかったのは巨大な前後オーバーフェンダーとドアガーニッシュです。これらのパーツによりハリアーザガートの全幅はノーマルから85mmもワイドになっていたのでした。
またハリアーザガートはベースモデルがデビューしてからわずか1ヵ月後、1998年1月の東京オートサロンで発表されたこともニュースでした。つまり新車発表の前、初代ハリアー本体の開発と並行してカスタマイズモデルが製作されていたのです。
実はこのプロジェクトがスタートしたのは1996年。新車発表前のため、ザガートモデルのデザインを進行させていく端からベースモデルの設計データが変更されていきます。このためイタリアの工房と日本のモデリスタは相当に神経をすり減らしていったそうですが、なんとか東京オートサロンに間に合わせることができ、同年5月に200台限定での発売を達成することができました。
さてこのハリアーザガートが革新的だった点はまだあります。それは日欧コラボモデルでおそらく初めて、モデルチェンジを経験したことです。
2代目ハリアーをベースに、2006年に2代目ハリアーザガートがデビューしたのです。
初代同様にザガート=SZデザイン社が手がけた外装は、やはり大きく手が入ったもの。ボディ側面にはフェンダーを拡幅するオーバーフェンダーが引き続き採用され、全幅は45mm増しとなっていました。250台限定で販売されています。
なおモデリスタはこれら2世代の間の2001年にもMR-Sをベースにした『VM180ザガート』を100台限定リリースするなど矢継ぎ早の、しかも中身が濃いコンプリート車両を生み出しています。
近年でも機動戦士ガンダムとコラボした『シャア専用オーリス』を2回に渡って発表するなど先進的印象の強いモデリスタですが、そのスピリットは20年以上も前から大々的に発揮されていたのでした。
(文/ウナ丼 写真/トヨタモデリスタインターナショナル)