リニアなハンドリングを実現するZFの2種のパワステと新しいブレーキシステム

これからの技術を紹介するZFジャパンのイベント「Vision Zero Days Japan」では、富士スピードウェイのショートサーキットを用いて、新しい機構の試乗も行われました。そのなかで気になったいくつかを紹介しましょう。

フォルクスワーゲン・ゴルフに採用されたのは「デュアルピニオン電動パワーステアリング」。このシステムはその名のとおりラック&ピニオン式電動パワステのピニオンが2つあるもの。

2つのピニオンのうち、1つは運転席のステアリングホイール(つまりハンドル)と接続され、1つはアシストモーターと接続されています。操作とアシストを分離したことで、操舵感のリニアリティがアップしています。また、単にリニアリティを向上するだけでなく、パワステフィールの味付けの自由度もアップしています。

もうひとつのステアリングシステムはベルトドライブ電動パワステと言われるもの。これは一時期自動車への採用が減っていたリサーキュレーティングボール式を使ったもので、ステアリングシャフトをベルトでアシストしています。

リサーキュレーティングボール式ならではのゆったりしたハンドリングと、ベルトアシストによるレスポンスのよさが両立しているのがいい点です。試乗車は日産の北米向け大型ピックアップのタイタンで、こうした大型で重量級のクルマとはとくにマッチングがいいです。

中国の長安汽車製SUVのチャンアンに採用されてたのはブレーキバイワイヤのシステムでした。このシステムでは、ブレーキペダルと油圧装置は機械的に接続されていません。ブレーキペダルを踏んだ際の入力が演算され、モーターが油圧を発生するシステムなので、ブレーキタッチの味付けを自由に行えるメリットがあります。

また、万が一の際の急ブレーキでは人間の踏力では発生不可能な液圧を瞬時に作り出すことが可能です。テストモードで緊急ブレーキを作動してもらいましたが、体験したことがないような減速Gでした。

かつてはミッション、現在は先進運転アシストで名を馳せているZFですが、クルマの基本となる機能部分でも地道な開発が続けられていることを実感できました。

(文:諸星陽一/写真:IZM・小宮岩男)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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