創業から変わらないクルマづくりへの想い【意外と知らないクルマメーカーの歴史・ルノー編】

フランスの自動車メーカーであるルノーは、ここ日本では2種類のクルマが人気を集めています。

一台が「メガーヌR.S.」。5ドアハッチバックの「メガーヌ」をベースに、モータースポーツを担うルノー・スポールがノウハウを注入した特別なモデルであり、これまでも市販のFF車としてドイツにあるニュルブルクリンクや日本の鈴鹿サーキットなどで最速記録を打ち出してきました。

そしてもう一台が「カングー」。本来は郵便局員などビジネスユースを想定して開発されたのですが、広い空間をはじめとした実用性とユニークなルックスは、日常を楽しく演出するためのツールとして日本では注目されており、カングーを愛する個性派オーナーが集まる「カングージャンボリー」はフランス本国でも一目置かれるほど。

こうして見ると、かなり趣味性の強いブランドに思えますが、実は125の国々で乗用車や商用車など約30種ものクルマを販売しており、「ルノーが好きな人だけに買ってもらえれば良い」という雰囲気は全くありません。そしてその歴史を遡ると、「人がクルマに合わせるのではなく、クルマが人に合わせるべき」という彼らの理念を垣間見ることができます。

創業は1898年。21歳のルイ・ルノーが、自身で開発したダイレクト・ドライブ・トランスミッションを搭載したクルマでモンマルトルの坂道を苦もなく登ってみせたのが始まりでした。

その利便性はたちまち評判を呼び、翌年には兄のマルセルとフェルナンとともにルノー・フレール社を設立。1.0Lの2気筒エンジンを積む「8CV」は、その静粛性と整備性の良さを買われ、タクシーとして大量の注文を獲得。第一次世界大戦では1200台もの「8CV」がフランス兵の輸送に貢献したと言われています。

そして1945年。第二次世界大戦の敗北をきっかけにド・ゴール将軍の行政命令の下に国有化され、「ルノー公団」として新たなスタートを切ります。 その最初の製品が「4CV」でした。フルモノコックボディの後方に直4エンジンを搭載したこの小型車は、その走行性能と実用性さらに価格の安さからヨーロッパだけでなくアメリカや日本でも人気を集め、生産を終えた1961年にはフランス車で初の100万台超えを達成。

その後も、前輪駆動と広い荷室を備えた「ルノー4」や「ルノー5」といった小型車を筆頭に、欧州ベビーブームによる子育て世代に向けた中型車「ルノー16」やヨーロッパ初のミニバン「エスパス」など、常に使う人に配慮したクルマを生み出してきました。

もちろん、その考えは現在も変わりません。それが顕著に感じられるのが小型車の「トゥインゴ」です。

ボディは極力小さく、さらにエンジンをボディ後方に積むことでハンドルの切れ角を広く取ることにも成功しています。もちろん、大人4人が乗れる空間は確保。ちなみに価格は171万円から。入り組んだパリでも機敏に走れるように開発されたと言いますが、その魅力はここ日本でも輝くはず。

(今 総一郎)