「赤ん坊が最初に覚える言葉は…シトロエン」!? 独創的なのはクルマだけではなかった【意外と知らないクルマメーカーの歴史・シトロエン編】

フランスの自動車メーカーといえば、ルノー、プジョーそしてシトロエンの3社が有名です。そのうち、プジョーとシトロエンの2社はPSAというグループに属しており、例えばプラットフォームなどを車種によって一部共有していることがあります。

しかし、両社のクルマを比べた時、より独創性が際立っているのは「シトロエン」でしょう。

シトロエンの始まりは1919年のこと。ダブルヘリカルギアと大砲用砲弾の製造で財を築いたアンドレ・シトロエンがヨーロッパでの自動車の大衆化を目指して創業しました。

そんな彼は、ただクルマを普及されることを目指していたのではなく「暮らしを豊かにするクルマづくりの鍵は『独創と革新』にある」という思想を常に抱いていたと言います。

確かに先述した通り、シトロエンのクルマは個性的です。例えば1948年に発表した「2CV」は、手押し車などが主な輸送手段だった農民の様子をヒントに、「人間4名と50kgのジャガイモを運ぶことが可能で、最高時速は37マイル、燃費は3リットル/100km、かつ快適な乗り心地を保証」といった条件で開発されました。

発売当初はその奇抜なルックスを揶揄する声も多かったのですが、合理的な設計は年々人気を高め、フランスの日常を象徴する存在へと成長しました。

そのほか、1955年に発表した「DS」もユニークな存在。UFOのような外観に加えて、エアスプリングと油圧シリンダーと油圧ポンプを組み合わせたサスペンション「ハイドロニューマチック」を採用するなど、技術においても独創的なモデルでした。

しかし、『独創と革新』を理念としたのはクルマだけに留まらず、広告戦略でも独創的だったと言います。フランスを象徴する「エッフェル塔」は1925年から1936年の11年間に渡って「CITROËN」の電飾文字があしらわれ、その輝きは約40km離れた場所からでも視認できたそうです。

また、現在では一般的ですが、ニューモデルが登場した際に作られるミニチュアカーも将来の顧客である子供たちへのアピールを狙って行なったものであり、「赤ん坊が最初に覚える言葉はパパ、ママ、そしてシトロエンだ」という当時の勢いの強さを感じさせる逸話も残っています。

(今 総一郎)