国産車初の300km/hオーバーマシン、HKSセリカXX「M300」のメカニズムをチェック! その2【OPTION 1984年3月号より】

1981年11月17日、G.A光永パンテーラが記録した日本初の300km/hオーバー、307.69km/hから苦節2年。ようやく出た~! 国産車初の300km/hオーバー、301.25km/hを記録した大チューニングメーカー・HKSのM300。今回のその2では、この輝かしいSPLマシンの中身を見てみましょう。これでもか~!の技術と裏技!?が盛り込まれたM300とは、いったいどんなマシンだったのか?  さっそくドーゾ!

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驚異の超ド級マシン メカニズム解説
600psのハイパワー、空力、サス、トータルチューニングが新たなる地平を拓いた!

光永パンテーラが300km/hオーバーを実現して以来、第2の300km/hマシンはどんなクルマが、どんなチューニングで、そしてどこのチューニングメーカーが達成するか興味深く見守ってきたが、ついにHKSがXXの5M-GEUエンジンを使って300km/hオーバーを達成した。

パワーは約600ps。外観が示すようにスーパーシルエットマシンとほぼ同等の出力を得ている。5M-GEUを使ってどんなチューニングをすれば600psのパワーが得られ、300km/hオーバーカーになるのか?

【パワー】600psの大パワーは5M+ツインターボ

5M-GEUをベースにツインターボ化。意外にもノーマルパーツが多用されているのに驚かされる。まず、シリンダーヘッド。ノーマルの加工で燃焼室形状の変更はなく、容量を合わせた程度。各ポートは研磨され鏡面仕上げになっている。

5Mがメカチューンしにくい理由のひとつに、動弁系を含むヘッド回りの難問があった。つまり、オイルリフターを配したラッシュアジャスター式カムシャフトである。HKSでは許容範囲を7000rpmと予想しているが、あまりに不安が残されるため、このシステムを取り除き、従来のツインカム(トヨタ製)と同じようにシム調整式のメカニカルとしてしまったのだ。これで大きく高回転側へチューニングは飛躍する。

カムシャフトはそのため300度の作用角を持つものが使用された。またバルブ、バルブスプリングもHKS製のSPL仕様となっている。

ブロック側は、HKS製のピストンを使用し2mmオーバーサイズの2892cc。5M-G用としては珍しいオーバーサイズのもの。形状はほぼノーマルと等しいがターボ用のローコンプ、アルミ鍛造。コンロッドもノーマル加工で560gのスタティックバランスが取られている。仕上げはメッキされたような研磨とタフトライドである。

クランクシャフトはノーマルの加工品で、フルカウンターによるダイナミックバランスと各ジャーナル研磨、タフト加工をし、極力フリクションロスを防いでいる。

注目はキャブレーション。このユニットにはインジェクションでなくノーマルアスピレーションのソレックス44φが使用されていることだ。というのは次期HKS新製品は5M-GEU用キャブキットを発売するからで、このマシンはその製品性能テスト用であったのだ。

このキャブだが、ジェット類はノーマル。ただしアウターベンチュリーのみ拡大されている。このノーマルアスピレーション化によってデスビをカムの後ろ側、バルクヘッド側に移動する苦労も見られた。

ターボチャージャーはギャレット製T04Bをツイン装着+オイルクーラー。このタービンに1.2kg/cm2の圧をかけ600psの高出力を得ているわけだ。小型のインペラーが使用されているのも特徴だが、元々高回転用のT04Bだから低速域は犠牲になってしまう。そのためのツインでもあるが、排気系に苦労がある。特にステンレス製タコ足は長めに取り回しされトルクを稼いでいる。

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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