【東京モーターショー2017】ブレーキの概念を変える新技術。曙ブレーキのMR流体ブレーキは超高度テクノロジー?

東京モーターショー2017では様々なサプライヤーの出展も興味深いもの。

ブレーキサプライヤーとして大きな地位を築いている曙ブレーキも興味深い出展をしています。

曙ブレーキではF1チームに供給するブレーキシステムや、スーパーカーのマクラーレンP1に標準装着されるブレーキシステムなど、トップメーカーとしての業績を展示しています。

そして滅多に目にすることが出来ない新幹線のブレーキパッド!こういった最先端技術は凄く興味深く魅入ってしまいます。

しかし、その最先端技術を大きく超えていく未来技術にも取り組んでいるところにサプライヤーのサバイバルを感じさせます。その未来技術とは「MR流体ブレーキ」。

一般的なブレーキシステムであるディスクブレーキは、タイヤに直結する円盤をブレーキパッドで挟むことで制動をします。つまり摩擦力で制動するのです。しかしこのMR流体ブレーキでは摩擦力ではなく液体の粘度で制動します。

本体には回転する円盤と特殊オイルに鉄粉を混ぜたMR流体という液体を密閉してあります。ここに円盤と垂直方向に置かれた電磁石で磁力を与えるとMR流体の粘度が変わる。つまり硬く固形化していくのです。その硬くなったMR流体が円盤を制動する。円盤にはタイヤが装着されているのでブレーキがかかる、という仕組み。

ブレーキがかかる際に摩擦を生じないため、これまでのディスクブレーキやドラムブレーキで発生していたブレーキダストと呼ばれるカスが発生せず環境性能に優れていること、そして磨耗する部品が無いためにメンテナンスフリーを実現していることが特徴となります。

しかし、このMR流体ブレーキにはもっと大きな特徴があります。電磁石による制御のため、油圧配管が一切不要となりブレーキシステムのバイワイヤー化、つまり完全電動化を達成できるのです。

曙ブレーキのブースでは実際にこのMR流体ブレーキを体感できる展示を行っています。こちらはホイールについたハンドルを回しながら右側についたスライダーを動かしていくとブレーキがかかることを実感できるというもの。

こちらはMR流体ブレーキ本体にペダルをつけ、ブレーキのレスポンスを体感してもらおうというものです。

様々な動作をペダルを漕ぎながら実体験できるでも装置ですが、そのレスポンスのよさに驚きです。特に1秒間に40回や100回という制動のかけ方が出来るということは簡易的なトラクションコントロールにも応用できるのではないでしょうか。

このMR流体ブレーキですが、すでにトヨタ車体の超小型モビリティであるコムスに取り付け走行実験がなされています。そして2020年のオリンピックイヤーには1500ccクラスの乗用車に取り付けて実用化し、2025年に市販するというロードマップも示されています。

人工知能による自動運転が未来のカタチとして提示されている東京モーターショー2017ですが、そんな超高度テクノロジーである人工知能による自動運転を見据えてのサプライヤーとして求められる非常に大切なテーマとなるのが完全電動化。油圧や空気圧を一切廃し、人工知能がコントロールしやすい電動化を施すことにサプライヤーは様々な方向から心血を注いでいるのです。

(写真・文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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