電動化の流れには抗えないと思わせる2017年の東京モーターショーですが、内燃機関はまだまだ進化する余地があるということを示す展示も、じつは少なくありません。それは自動車のパーツを生み出しているサプライヤーの集まるエリアでも感じることができました。
たとえば、高性能エンジンには欠かせない部品を作り続けているマーレ・ブースの主役は、エンジン関連パーツをリアルに配置した大きなアクリル製ショーケース。48V電動システムも開発している同社ですが、ブースデザインは内燃機関の可能性を高めることも大事にしているという意思が感じられます。
そのマーレの新アイテムで注目したいのは「マップ制御サーモスタット」です。
サーモスタットといえば水温に応じてワックスが膨張・収縮することによって水の通り道を開閉、エンジンの冷却性能を制御するパーツですが、そこに電子制御を加えたのが「マップ制御(コントロール)サーモスタット」。そして、マーレの言う『マップコントロール』には2つの意味があります。
1つは、いわゆるエンジンの制御マップという言葉から想像できる、細かく条件を設定した緻密な制御。もうひとつは自車位置やルート設定といったナビゲーションと連動した制御を行なうという意味でのマップ(地図)コントロール。つまり、このマップコントロールはダブルミーニングというわけです。
具体的には、目的地までのルート設定をしておくことで、負荷がかかりそうなシーン(登坂路)に近づくと、事前に水流を確保しておいて、エンジン性能を引き出すといった使い方が想定できるのです。今回、展示されているマップコントロールド・サーモスタットは中大型エンジン用、つまりトラックなどに使われるサイズです。ルートの決まっている物流だからこそ、こうしたソリューションが燃費とパフォーマンスの両立に有効というのがマーレの主張。
こうして効率を上げることで、内燃機関の可能性はまだまだ広がるというわけです。
(山本晋也)