【新車試乗 ホンダN-BOX】軽自動車初の電動ウェイストゲートを取り入れたターボエンジンとは?

2017年にフルモデルチェンジされたN-BOXのパワートレイン設計責任者は本田技術研究所・主任研究員の瀬田昌也氏で、F1用エンジンやS660のパワートレイン開発も担当した方です。 瀬田氏は一般的な660ccエンジンが抱える課題について「燃費と加速性能の折り合い。燃費志向の高まりで、出力・トルクを下げてでも燃費を高めるという考え方が生まれたために、アクセルを踏んでも思ったほどの加速が得られず、交差点での右折時にあわててしまったり、加速が足りないからアクセルを踏み込みすぎて、かえって燃費を悪くしてしまっていることがある」ということを掲げ、通常走行に必要な出力、トルクを得られるような設計が行われました。



自然吸気エンジンは吸気側バルブに可変バルブタイミング&リフト機構のVTEC(ブイテック)を採用しました。VTECエンジンは1989年のインテグラで初採用されましたが、軽自動車で採用されるのは初めてのことです。低速側での出力低下を起こさず、4000回転以上の領域での出力アップを実現しています。自然吸気エンジンは58馬力/65Nmのスペックで、FFモデルの場合27.0km/LのJC08モード燃費を実現しています。自然吸気エンジンは6000回転までスッキリと勢いよく回って加速。その後はじっくりと加速を続けるというフィーリングです。

一方、ターボエンジンにも軽自動車初のシステムが採用されました。それは電動ウェイストゲートと言われる装置です。ターボエンジンは排ガスの力を使って吸入空気をシリンダーに押し込んでいますが、その排ガスの圧力が高まったときに圧を逃がす装置が、ウェイストゲートです。一般的なウェイストゲートは、圧力が上がったときに解放しますが、電動ウェイストゲートは細かく圧力を制御することで理想的な過給を行い、出力を確保しながら低燃費を実現しつつレスポンスを向上しています。

ターボエンジンのスペックは64馬力/104Nmで、25.0~25.6km/LのJC08モード燃費を実現しています。自然吸気エンジンが6000回転付近から力不足になるのに対し、ターボエンジンはその先もグッと力強い走りを続けるところが特徴です。

(諸星陽一)

 

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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