「美しい物は売れる」創業者の意思を具現化した最新モデルとは?【意外と知らないクルマメーカーの歴史・ジャガー編】

イギリス生まれの自動車メーカーであるジャガー。ひと昔前までは老齢の紳士に似合うようなクラシックなクルマを販売していましたが、現在はスポーティかつスタイリッシュな若々しいモデルを販売しています。

そもそもジャガーは、1922年にウィリアム・ライオンズとウィリアム・ウォームズレイによって1922年に創業された「スワロー・サイドカー・カンパニー」が前身となります。

サイドカーの製造を中心にボディ修理及び製造も手掛けるようになり、1927年に販売した「オースチン・セブン・スワロー」は独自のアルミ製ボディの美しさで好評を獲得。これをきっかけにウィリアム・ライオンズは「美しい物は売れる」という確信に至ったそうです。

確かにジャガーのクルマはデザインの美しさが特徴であります。内外装とも派手な装飾で飾り立てるようなことはなく、「おぉ!!」と声を上げてしまうような驚きとは違って「ん~、いいねぇ」と唸らせるような凄みが内側から滲み出ています。

そんな現代の「ジャガー」の象徴と言えるモデルが「F-タイプ」です。

2013年に日本での販売がスタートしたスポーツカーであり、アルミニウム製ボディや前後重量配分を徹底的にこだわったプラットフォーム、さらにレスポンスに優れるエンジンがもたらすドライブフィールは異色の存在でした。

「F-タイプ」をきっかけに「XE」や「F-PACE」「E-PACE」といった若々しさ溢れるモデルへの路線変更を行なっているかのように思えますが、実はその伏線は1961年デビューの「E-タイプ」ですでに張られていたのです。

ル・マン24時間レース参戦のために開発された「Cタイプ」とその発展系である「Dタイプ」の後継として登場した「Eタイプ」は、マルカム・セイヤーがクルマの空力特性を試験するために採用した風洞試験を経て誕生した流麗なスタイリングの内側に3.7L直6を搭載し、最高速度は240km/hと当時では驚きの走行性能を誇っていました。走りの良さを訴えるほか、クーペとカブリオレという二種類のボディタイプが用意されていた点も「F-タイプ」と共通しています。

しかし、好評だった曲線美はアメリカでの安全基準を合わせて手が加えられていきました。1968年のシリーズ2では、ヘッドライトが明度確保のため前方に移動したほか、フロントとリヤのバンパーが大型化。さらに1971年に登場したシリーズ3では、フロントは格子状のメッキグリルで飾られ、オーバーライダーも備わったことでボディのボリュームと迫力がアップ。エンジンは5343ccのV型12気筒を積んでいましたが、ボディの大型化を受けて最高速度は227km/hと、当初の「E-タイプ」にあったシンプルさや軽快感はなく、またオイルショックによるスポーツカーへの逆風も受けて1975年2月に生産を終了しました。

こうして幕を閉じた「E-タイプ」は「F-タイプ」へコンセプトを託した……と思いきや、電気自動車「E-TYPE ZERO」として復活を遂げるようです。

英国コベントリーにあるジャガー・ランドローバー・クラシック・ワークスにてレストアされ、1968年式「E-TYPE Series 1.5 Roadster」をベースに、当時のエンジンと同サイズ及び重量のリチウムイオンバッテリーパックを搭載し、電動モーターも当時のギヤボックスの位置に収まっているとのこと。肝心の出力は220kWを誇り、0-100km/hは5.5秒。総重量が46kgも軽くなっていることもあり、オリジナルよりも1秒早くなっているとのこと。なお、航続距離は270km。「美しい物は売れる」という創業者の確信を感じさせられます。

(今 総一郎)