「GT」グレードながら、外装は3008 GTには用意されていた「クープ・フランシュ」というリア1/3を斜めに落としたツートンカラーではない。マットブラックのフェンダーガードやクロームのグリルやウインドウモール、アンダーガードなど、むしろ落ち着いた質感でまとめられている。サイドから見ればリアドアとクォーターウィンドウ、そしてホイールベースが後方にストレッチされていることがよく分かる。
ちなみに外寸は4641×1844×1646mmでホイールベースは2840mmと、3008に比べて全長は+14.4cm、ホイールベースは+16.5cmも長い。トレッドはフロント側が+14mmの1593mm、リア側は同一の1587mmと、異なったジオメトリーに対してダンパー&スプリングの設定も5008独自のものとなっているという。
ホイールベース延長により7人乗りとして3列目シートが備わることが5008の大きな特徴だが、その恩恵はトランク容量にも及んでいる。平時の5人乗車体制なら780L、2列目を倒せば1940Lと、VWティグアンをわずかに上回る。
しかも2列目シートの足元も、台座レールがせり出しているとはいえ、足の置き場には相当な余裕がある。2列目は独立シートの3人掛けだし、ティーンエイジャーの子供が乗っても不満はないだろう。2人掛けの3列目シートも、長時間はともかく体型によっては大人が座ることも可能なほどの、アクセスのしやすさと使い勝手だ。シートクッション自体に厚みはないため、やはり子供か緊急用ではあるが。
2,3列目のパッセンジャー・シートは確かに割り切りも感じられる。一方で前席のi-コクピット2.0は3008と同様の意匠とエルゴノミーで、よく練られている。ドアからダッシュボードを取り巻くように張られたグレーのウッド、そしてGTグレードならではのセミバケット気味のレザーシートの柔らかな質感が、視覚的にも触覚の上でも優しい。
8インチのタッチモニターから、その下に配された2段仕立てのピアノタッチの主要機能キー、バイワイヤのシフトレバーにステアリング裏のパドルシフトまで、スポーツ・モードに切り替えるボタン以外はすべて、肘を自然に曲げた範囲で指や手がリーチするように置かれている。逆にいえば、ボタン長押しで入るスポーツ・モードだけはドライバーが確信をもって長押しする必要があるのだ。
助手席との「仕切り」を演出として、センターコンソール上に緩やかに立ち上がるクロームがもう少しソフトだと好悪が分かれないはずとは思うが、実用車でもドライバーズ・カー、として徹底的にステアリングを握る側の人間に奉仕するのがプジョー。いわばプジョーの車内とは、そういう優先順位のはっきりした空間で、マックス7名乗車の5008だからこそ、その閾(しきい)はむしろ明確なのだ。