アウトドアにも出かけたくなるのも強みのオールシーズンタイヤ【ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド試乗】

みなさん、ゴールデンウィークのレジャーどのように楽しみましたか? 春の訪れとともにキャンプなどのアウトドアに出かけた方も多かったことかと思います。アウトドア指向をもってクルマで出かける方は年々増えてきてます。なんたって、今人気のあるクルマのジャンルはSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)と言われるもの。つまり、クルマ自体がアウトドア指向なんですからね。

SUVの最大の魅力は舗装路はもちろん、ちょっとしたラフロードや河原などのオフロード、キャンプ場などに気軽にアクセスできることにあります。1台のクルマでいろいろな体験ができてしまうのは、クルマの使い方を考えるととても便利でうれしいことです。

そんなSUVと同じような性能を持ったタイヤがあります。「オールシーズンタイヤ」と呼ばれるものです。ここで勘違いをしないでほしいのですが、「オールシーズンタイヤ」はSUVのためのタイヤではなく、よほど特殊でない限りあらゆるクルマに対応するタイヤです。ミニバンでもセダンでもワゴンでも、使うことができます。そして「オールシーズンタイヤ」を使うことで、ミニバンやセダンやワゴンがSUVライクなクルマへと変化することも期待できます。

「オールシーズンタイヤ」のなかでも最近、とくに注目を浴びているのがグッドイヤーが発売している「ベクター4シーズンズハイブリッド」というブランドです。なんでそんなに注目されているかといえば、まるでスタッドレスタイヤのような雪道性能を持っているからです。冬も終わったばかりでスタッドレスタイヤの話題なんて……と思う方もいらっしゃるでしょうが、あと半年もすればスタッドレスタイヤのことを考えないとなりません。「オールシーズンタイヤ」でとくに重視しておきたいのが雪道性能なのです。それはなぜか? タイヤにとってもっとも過酷な条件が雪道だから……にほかなりません。雪道での性能の高さが「オールシーズンタイヤ」の性能の高さと言っても過言ではありません。「ベクター4シーズンズハイブリッド」の雪道性能はスタッドレスタイヤと同様で、発進、加速、コーナリングはもちろん、もっとも不安な部分であるブレーキについても高い性能を発揮しています。

そんな「ベクター4シーズンズハイブリッド」ですが、スタッドレスタイヤ以外の部分での性能も非常に高いものとなっています。今回は「ベクター4シーズンズハイブリッド」を履いて高速道路やワインディングを走り、富士五湖周辺にあるキャンプ場へと出かけ、その性能をチェックしました。

テスト車両は最新のVWゴルフトゥーラン、タイヤサイズは215/55R17です。スタッドレスタイヤは高速道路を走ると周波数の高いノイズを発生することが多いのですが、「ベクター4シーズンズハイブリッド」はそうした要素のノイズは少なく快適です。大きな段差を乗り越えると“パンッ”という音が出ますが、それも頻繁ではなく、速度や段差のきつさなどの条件がそろったときだけで、ノイズ関連は気になる部分はほとんどありませんでした。乗り心地についても、カドがないもので快適です。タイヤが重いという印象もなく、サスペンションの動きを妨げているような状態は確認できません。また、直進安定性も高く、ステアリングの中立感もビシッとしたしっかりしたものが確保されています。

高速道路での乗り心地やハンドリングにはタイヤの剛性が大きく影響します。「ベクター4シーズンズハイブリッド」はこの部分でも申し分がありませんでした。ステアリングを左右に切ってもサイドウォールが過度に変形して腰砕けになるようなことはありません。少しブレーキをかけて、フロントタイヤに荷重をかけながらステアリングを切っても剛性感は失われません。前方に障害物があり、減速しながらステアリングを切るような緊急事態でもしっかり挙動を保てそうです。

この剛性の高さはワインディングでも威力を発揮します。ワインディングではステアリングを左右に切りながら走ることになりますが、その際の反応もしっかりとしています。コーナー入り口でステアリングを切り始めるとススッとノーズがインを向きしっかりと曲がっていきます。もちろんスポーツタイヤのような反応ではありませんが、雪道性能の高さを考えると驚きの性能です。長い時間ステアリングを保持したままになる回り込んだコーナーで、大きく横Gがかかっている状態から、ステアリングを切り増したり戻したりといった操作をして走行ラインを変更してもしっかりとタイヤがついてきます。サイドウォールの剛性が弱いタイヤはこうした状況が苦手なのですが「ベクター4シーズンズハイブリッド」はこうした性能も確保されています。

今回の試乗ではウェット路面を経験することはありませんでしたが、以前試乗した際にはかなりのヘビーウェットを経験しました。「ベクター4シーズンズハイブリッド」はセンター部分に2本配置された真っ直ぐなグルーブ(溝)があります。さらにそのグルーブから外側に向かって斜めに太いグルーブが配置されています。この2種類のグルーブによってタイヤと路面の間にある水膜を除去することでウェット性能を確保していますが、その性能はかなり高く、水深が深くてもしっかりと走ることができます。

このグルーブの配置は水だけでなく、泥などのタイヤの溝に入った異物の排出にも威力を発揮します。泥だらけの道では、タイヤの溝に泥が詰まってしまい、溝が溝として機能せず、ツルツルの溝なしタイヤのようになってしまうことがあります。「ベクター4シーズンズハイブリッド」は、M+Sという表示がされている「オールシーズンタイヤ」です。M+Sはマッド(泥)とスノー(雪)でも使えますという表示で、泥やぬかるみの道でも威力を発揮します。

じつは雪と泥は似た特性があって、タイヤの溝の中に詰まってしまうことで、タイヤの性能を弱めてしまいます。そこで大切になるのが“排雪性能”や“排土性能”と呼ばれるものです。溝の中に入った雪や泥をタイヤの接地面で圧縮して、路面から離れたタイミングでタイヤの溝が開き、遠心力でタイヤから排出していくものです。スタッドレスタイヤでは当たり前の性能ですが、サマータイヤではあまり重視されていません。「ベクター4シーズンズハイブリッド」はM+Sの表示のある「オールシーズンタイヤ」なので、当然このぬかるみ性能も高いのです。キャンプ場などでは、ちょっとアクセス路から外れたりするとぬかるんでいる場所も多く、予想外にスタックしてしまうこともありますが、「ベクター4シーズンズハイブリッド」はそうした心配もグッと少なくなります。

また「ベクター4シーズンズハイブリッド」はショルダー部分がラウンド形状となっているうえに、サイドウォールも膨らみのある形状となっていることで、岩や砂利などが散在するガレ場などでも安心感があります。ショルダー部が直角に近いスクエア形状のタイヤは、岩などでショルダーを痛める可能性が高いのですが、ラウンド形状とすることでそうした危険性が下がります。サイドウォールが膨らんでいるということで、ホイールのリムとの段差が大きくなり、結果としてホイールが岩などに接触することを避け、保護することができます。河原へのアクセスなどでは、普通のサマータイヤよりも安心できることでしょう。

「ベクター4シーズンズハイブリッド」は2016年から日本で製造されているモデルで、サイドウォールには冬用タイヤであることを示す「SNOW」の刻印がつきました。この刻印がついたことで、冬用タイヤでなければ走れないような規制が行われている場合でもスムーズにチェックを受けられるようになっています。用意されるサイズは145/80R13~235/50R18まで44種と豊富で、17インチ、18インチサイズにはエクストラロード(XL)規格に準じたモデルも用意され、車重の重いクルマにも対応しています。

「ベクター4シーズンズハイブリッド」ならば、年間を通して使うことができるので、夏のスタッドレスタイヤや冬のサマータイヤの保管場所や保管料金を気にする必要もありませんし、雪が降ってきたタイミングで焦ってタイヤ交換をしたり、購入のためにタイヤショップで行列したりする必要もありません。とくに都市部に住む人にとっての理想のタイヤが、「ベクター4シーズンズハイブリッド」といえるでしょう。

(諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる