【東京オートサロン2017】マツダの出世頭、新型CX-5のデザイン開発秘話

今年も多くの自動車ファンが訪れた、東京オートサロン。近年は自動車メーカーの積極的な出展が話題となっており、マツダもそのメーカーのひとつです。最近盛んにCMで見かける新型CX-5がいよいよ一般向けに広くお披露目される場ということもあり、マツダブースは多くの人で賑わっていました。

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このオートサロンでマツダは「デザイントークセッション」と呼ばれるトークイベントが行われました。

s_%e7%94%b0%e4%b8%ad%e8%8b%b1%e6%98%ad%e3%81%95%e3%82%93マツダブランドを統括する田中英昭さんや新型CX-5のチーフデザイナーを務めた諌山慎一さん、カラー&トリムデザイナーの岡村貴史さんがマツダ車への熱い思いをファンへ向けて語りました。

田中さんの最初の愛車は「赤いファミリア」と呼ばれ親しまれた5代目ファミリアだったそうで、かつてはマツダの実験工房「M2」にて初代ロードスターをベースにした「1001」や「1028」と呼ばれるクルマの開発を担当。現在は、ディーラーの店舗デザインを主に業務として行っています。

s_%e8%ab%8c%e5%b1%b1%e6%85%8e%e4%b8%80%e3%81%95%e3%82%93諌山さんは、以前ドイツやアメリカの拠点に赴任しており、アドバンス(先行開発)デザインを手掛けていました。それから日本に戻り、2014年に新型CX-5のチーフデザイナーに就任。このクルマの開発には、並々ならぬ苦労があったと言います。その諌山さんが新型CX-5のデザインで狙ったのは「力強い存在感やスタンスの良さ、大人っぽい上質感」だと語ります。例えばフロント部は従来より彫りを深くするなどして、奥行きを持たせることによって大人っぽい精悍な表情を演出しました。単に部品をデザインするというやり方ではなく、部品ひとつひとつが完成されたアートピースのような美しい形になるよう求めたそうです。

またスピード感を出すためにAピラーを寝かせていますが、このスピード感を表現する上半身(キャビン)と、どっしりしたSUVらしさを主張する下半身(ボディ)のバランスを取るのは非常に大変だったとのこと。ボディサイドにもひと工夫凝らし、柔らかく膨らんだ面と凹んだ面があり、走り出すと景色が映り込んで光と影が変化する絶妙なニュアンスを表現させているのですが、この表現がとても難しかったそうです。

 

s_%e5%b2%a1%e6%9d%91%e8%b2%b4%e5%8f%b2%e3%81%95%e3%82%93岡村さんはプライベートではバンド活動を行うなどアクティブ派で、社内ではデザイナーなどのスタッフを取りまとめる立場にあります。決して規模が大きくないマツダですが、横のつながりや絆をいつも意識して業務に取り組んでいるそうです。

岡村さんは、新色であるソウルレッドクリスタルメタリックやロードスターに期間限定(2月末まで。欲しい!と思ったらディーラーへ急ぎましょう)で設定されたクラシックレッドにちなんで、マツダと赤の関係について話を聞かせてくれました。マツダは時々経営が不安定になることがある(!)のですが、そんな時に救世主となるようなクルマには、いずれも赤が設定されていたそうです。しかもただの赤ではなく技術的なハードルの高い赤で、今回のクラシックレッドも水性塗料を使用しなければならないという条件をクリアさせることが新たなチャレンジだったと言います。

このあと、マツダデザインを浸透させるために日本の様式美を海外拠点のエンジニアに積極的に発信したエピソードや昨年のオートカラーアウォード受賞時のこぼれ話なども取り上げられ、あっという間に45分が経過。最後に田中さんが「我々の会社は小さな会社で世界シェアも1.4%くらいなんですけど、この数を増やしていこうとは実はあんまり考えてないんです。ただその1.4%の人と、より深くお互いのことを理解し合って我々も成長できればと思っています。これからも皆様との接点を増やしていきたいですね」という、ファン感涙ものの一言を強く語ってくれました。

新型CX-5は、いよいよ来月発売です。開発陣の魂が十二分に感じられる「神ってる」ニューモデル、早くディーラーで実際に見て触れて確かめてみたいですね。

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(山崎 利彦)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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