自動車部品大手のボッシュは、同社の新型二輪車用アンチロックブレーキシステム「ABS10」が、カワサキVersys-X 300 ABSに量産車として初搭載され、続いて2018年モデルのスズキGSX-S125 ABSにも搭載される予定と発表しました。
二輪車用アンチロックブレーキシステム(ABS)については、欧州連合(EC)が125cc以上の二輪車に搭載を義務付け、日本国内でも125cc以上の二輪車にABSの搭載が法制化されました。その他にも、米国、オーストラリア、ブラジル、インド、台湾で二輪車のABS搭載義務化が進行しています。今回のカワサキ・スズキ2メーカーのABS搭載は、これらの法制化に対応したものと見られます。
二輪車用のABSは、1987年にBMWが「K100」で初めて搭載し、その後、1994年にボッシュが二輪車用ABSとなる「ABS2L1」を開発しました。
二輪車用ABSが難しいのは、ABSを搭載するスペースを確保することが困難であること、作動するときの「ガクガク」としたブレーキショックが二輪車では転倒につながってしまうことの2点です。
ボッシュは、これらの二輪車用ABSの課題に対して改善を続け、1994年の「ABS2L1」では4.5kgだったABSの重量も、2011年の「ABS9」では0.7kgに軽量化されました。そして、今回の新型「ABS10」では重量が0.45kgになり、「ABS9」と比較して約30%の軽量化と、約45%の小型化が達成されています。
二輪車用ABSは元来特定の大型バイクのみに採用されていました。一方、50ccの原付バイクから大型バイクまでフルラインで車種を揃えている日本の大手二輪車メーカーでは、小型バイクに搭載しにくいABSに対して消極的な姿勢をとらざるを得ないという事情もありました。
ボッシュでは、世界の二輪車生産の90%を占める中国、インド、東南アジア諸国などのアジア地域でABSの普及を進め、インドネシアとタイだけでも、年間約2万1,000人にのぼる二輪車事故の死亡者数を減少させたい、としています。
そこで気になるのが、日本の二輪車メーカーのABSに対する取り組みです。当然ボッシュはABSのパテントを保有しており、ボッシュのパテントを回避したABSを日本の二輪車メーカーが開発するには、相当の困難が予想されます。
今後、日本の二輪車メーカーがABS搭載の義務化の流れを受けて、カワサキ・スズキの2社に続いて、ボッシュのABSを導入することになるのか、自社開発のABS搭載を目指すことになるのかに注目が集まっています。
(山内 博・画像:ボッシュ)