一方の1.2L直噴ターボは、最高出力85kW(116ps)、最大トルク185Nmでオーリスと同じ。
2013年から毎年、ドイツのニュルブルクリンクに持ち込み、ニュルブルクリンクのコース内だけでなく、近郊のカントリーロードなどでブラインドコーナリングをブラッシュアップ。ほかにもオーストリア、イタリア、フランス、イギリス、オランダ、ベルギーといった欧州各地で走りを仕上げてきたといいます。一般道を走り込んで良いクルマ作りにつなげるトヨタの方針に期待が高まります。
プラットフォームはプリウス同様にTNGAにより基本性能の向上が図られています。C-HR向けの新サスペンション、ボディ剛性も従来よりも30〜65%向上。
アンダーボディもプリウス用をベースとしながらも、大径タイヤと高くなったヒップポイントに対応する部品が組み込まれています。また、4WDである1.2L 直噴ガソリンターボ車には、4WD化に対応するパーツがアンダーボディに組み込まれています。
サスペンションもプリウス用を基本としながらもC-HR用にチューニングされていて、フロントにZF製のSACHSダンパーと大径スタビライザー、リヤにもSACHSダンパー、大径スタビの採用に加えてブッシュなども変更されています。
SUV化により全高とヒップポイントが高まることで、アイポイントも高くなって見晴らしが良くなる一方、コーナリング時の姿勢など運動性能の面では不利になるのが一般論。スポーティとは少し違うプリウスをベースとし、どこまでスポーティな走りを実現しているか気になるところで試乗へと向かいます。
今回試乗会場となった日本サイクルスポーツセンター内の自転車用コースを逆回りで走り出すと、最初に急な下り坂でしかも右に大きく曲がるコーナーが出現します。そんなシーンでもボディがグラリと傾いてしまうことはなく、足がよく動き、剛性感の高さも伝わってきます。もちろん、車重が軽い分、ガソリンのほうが動きの余裕をほんの少し感じられます。
このコースは多様なコーナーが待ち構えていていますが、C-HRはニュルブルクリンクで鍛えてきたというだけあって100km/hまでという条件下でも余裕綽々でこなしていきます。複合コーナーでの荷重移動なども実にスムーズ。
乗り心地の良さも美点。路面の良さを差し引いてもボディ剛性感の高さ、しなやかな足まわりは間違いなく、それが前席だけでなく後席でも実現しているのには驚かされました。なお、後席の居住性は着座位値、シートサイズ、ヘッドクリアランス、前席座面下へのつま先スペースなどどれを取ってもライバルの中ではいいと言えるでしょう。
試乗車のタイヤはハイブリッドが18インチ、ガソリンが17インチでともにミシュラン・プライマシー3。ハイブリッドもガソリンターボも動力性能に不満はなく、日本の公道であればまず必要十分といえるでしょう。軽快なフットワークという点では、18インチタイヤだったハイブリッドよりも17インチを履いていたガソリン仕様の方が若干上。当然ながらグレード選びを左右するほどハンドリングに大きな差はありませんが、パワステの影響か、ハイブリッドよりもガソリンのほうがリニアに感じたのは個体差の範疇かもしれません。
いずれにしても、普通の走りの面でどちらが上といった大きな差は感じられませんので、ニーズに応じてハイブリッド、ガソリンを選んで間違いなしといえます。
(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)