–それぞれ共に戦っているチームメイトについて、教えてください。
中嶋:「アンソニー(デヴィッドソン選手)は、経験もあるドライバーですし、冷静なところと熱いところの二面性を持っています。技術的なフィードバックは正確ですし、それを言葉に表すのが上手ですね。セバスチャン(ブエミ選手)は、かなりアグレッシブで熱さが前面に出るタイプなんですが、コース上でそれがネガティブな方向に行くことは少なくて。アグレッシブで熱くなるんで『大丈夫かな』と思う時もあるんですが、これが意外にぶつからず(笑)ちゃんと帰ってくるという。だからスタートとかも安心して見ていられるし、頼りになります」
小林:「僕が一番経験が浅いんで複雑な立場ではあるんですけど、ステファン(サラザン選手)は経験がすごくあるので、色々聞きながらやります。ただ彼はラリーもやっているので、乗り方がちょっと特殊な部分があるので(笑) それを考慮してます。今までに出会ったことのないドライバーのタイプですね。マイク(コンウェイ選手)は、お互いそんなに経験がないというのを分かった上でクルマをつくっていくので、お互い強引さというのがなくて『みんなで一番乗りやすいクルマをつくろう』みたいな雰囲気でやっていくパートナーとして、すごくやりやすいです。チームが同じことを考えて同じことをやっていきたいという気持ちになれていて、いいチームかなと思ってます」
–いよいよ今週末、富士6時間ですが、LMP1の予選のラップタイムがスーパーフォーミュラを超えるのではないかという期待もあります。
中嶋:「今年、どうかな…。上回れるかはわかりませんけれど、ほぼほぼ一緒ですよね、去年のタイムは」
※参考コースレコード
LMP1レコード 1分22秒639(2015)
SFレコード 1分22秒572(2014)
–スーパーフォーミュラとの速さの質の違いというのはありますか?
中嶋:「一番大きな違いは加速ですね、LMP1に関して言うと。やっぱりハイブリッド含めたパワートレインの加速力というのはものすごいと思いますし、実際にエンジンとモーターを合わせた出力が1000馬力以上というのは本当にそれだけの数字が出ているので、そこからの加速力というのが、ラップタイムに関して言えば一番の強さかなと思います。それに対してSFはやっぱり重量が軽いです。ラップタイムはクルマの重さとタイヤのグリップによるところも多々あるので、やはりSFはその軽さを生かしたコーナリングの速さがラップタイムの特徴だと思います」
小林:「キャラクターが全然違うので一概には言えないですけど、SFは、直線は決して速くないですけど、コーナーで結構タイムが稼げているなというイメージです。逆にLMP1に関しては、やっぱり四駆で加速がすごく良くて、コーナリングの立ち上がりでだいぶ稼いでいるのかなと」
小林:「まぁでも、あの車重であのタイムで走るというのは、けっこう速いと個人的には思います。あと、WECでは燃料(流量など)がだいぶ規制されていて、それでもあのタイムで走れているっていうことが、なかなか現実とは思えないレベルですね。そういうところを見ていくと、可能性として、もっと速いクルマは作ろうと思えば簡単なんで、逆にそんな状態を見てみたいっていうか(笑)」
–まだまだポテンシャルはありそうですね。
中嶋:「ガソリン好きなだけ使ったら、どうなるかわからないね(笑)」
小林:「ガソリンを好きなだけ使って、バッテリーも1周思いっきり使って規制なしでやったら、たぶんF1なんか余裕で越えると思いますよ。直線でたぶん400km/hいくよね」
中嶋「ははは。1周8MJ使えたらすごいね(笑)」
小林:「すごいよね、恐ろしいと思う」
中嶋:「ちょっと乗ってるほうも怖いと思う」
小林:「それくらい(ポテンシャルは)あるんですけど、まあもちろんルールで規制があるからそうはできなくて、という状態での、あのタイムなんで」
中嶋:「いまのWECのレースって、限られたガソリンをいかに効率良く使うかっているレースなってるので、その考え方って結局市販車のエンジンと同じなんですよね。だからハイブリッドシステムもエンジンも効率を高めるっていうことが、そのまま市販車の技術にもつながっています。近年のこのレースは、効率をさらに高めるという開発の上で、市販車にとってもすごく重要な役割をしていると思います」
–そういったLMP1の特性にも注目して観戦すると面白そうですね。
中嶋:「それこそヘアピンとか加速性能が分かるようなところ、あとは1コーナーとか最終コーナーの立ち上がりでもいいんですけれど、そういうところで近くから見ると、LMP1の加速の速さというのがわかるんじゃないかなと思います。あとは音がクルマによって違いますね。僕らのクルマと、ポルシェ、アウディとそれぞれ音が全然違うので、なんかそんなところも見てもらえると面白いと思います」