テッド クラウス氏は、初代NSXに対面した際に「スポーツカーはこうあるべき」というホンダの主張を感じたそうです。
「コンパクトで低重心、高性能シャーシ、優れた視認性、シンプルで人間工学に基づいたインターフェイス」などを挙げ、初代NSXのコンセプトである「人中心のスーパースポーツ」を受け継ぎながら「新時代のスーパースポーツ体験」を実現したと強調。
日米合同チームで開発をスタートするにあたり、まず日本で初代NSXの開発メンバーやオーナーに会い、「NSXらしさとは何か」を深く理解することからスタート。そして、日米合同チームは、NSXらしさという基準を元に、開発のすべての意思決定を行ってきたそうです。
そして、新型NSXのコンセプトとしてまず「瞬時に反応する加速性能」を挙げ、アクセル操作に対して俊敏かつリニアに反応する加速フィールを目指したとしています。
2つめのコンセプトは「ドライバーに呼応するハンドリング」。
スロットル、ブレーキ、ステアリングなどのドライバーからのインプットに高い精度で呼応し、「人とクルマとの直感的なコネクションを創造する」と表現。
さらに「ヒューマン・フィット」を掲げ、キャビンの快適性や運転のしやすさにも注力、ドライバーの個性やスキルに関わらず、誰もが楽しめるスポーツカーを目指したとしています。
デザインについては「1ミリ1ミリすべての構成面がパフォーマンスを向上させる目的を持っている」と語り、空気抵抗やダウンフォース、冷却性能はスポーツカーのパフォーマンスを大きく左右するとして、最新のCDFシミュレーション(数値流体力学)を活用し、車体周辺の空力解析を実施。
機能的な要素をすべて取り込むことで「デザイン自体でエアロフローマネージメントができる」という結論に至り、「魅力的なデザインであり、スポーツカーとしての運動性能を高めるデザインが完成」したとのこと。
ボディについては、押出成形アルミ、プレス加工アルミ、3DQ超高張力鋼管、世界初のアブレーション鋳造アルミ、GDQ鋳造アルミ、プレス加工鋼鈑による複合素材によるスペースフレームを採用。その結果、コンパクトサイズを維持したまま軽量かつ高剛性、優れた衝突安全性を確保したとしています。
こうしたパッケージを土台として、高効率・高出力を誇る3モーターハイブリッドシステムの「SPORT HYBRID SH-AWD」を採用。
リヤモーターとトルクベクタリングを実現するフロントの左右独立式のモーターにより「ハイレスポンス、力強いリニアな加速、意のままのハンドリングを実現」したことで、一般路でもサーキットでも素晴らしい加速フィールを得ることができたそうです。
モーターは加速だけでなく「走る・曲がる・止まる」の面でモーターの駆動力を活用し、「ほんの10秒でもNSXのハンドルを握っていただければ、新開発のV6 3.5Lツインターボと3つのモーターの融合がもたらす新時代のスーパースポーツ体験」を実感していただけるはずと強調。
また、パワーユニットをフル活用して走行シーンに合わせて「Quiet」、「Sport」、「Sport+」、「Track」の4モードも用意されています。
テッド クラウス氏は、25年前日本で駐在していた時に「将来、米国の研究所が日本と同じくらい、いや日本よりも強くなるといいな」と仲間達に語ったそうです。
しかし、米国、日本という言語や国にとらわれず、同じ価値観を共有しているチームだと語り、新型NSXはそんなホンダにしか作れないスーパースポーツだと締めくくっていました。
(文/写真 塚田勝弘)